物々訓倶楽部

第9回 投稿作品【自由部門】

2013年12月29日

第9回募集(2013年8月15日~10月14日)に寄せられた「自由部門」の作品をご紹介します。
ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

イエスマンにはならないと
心に決めて生きています。
―――― 扇風機

作者:お題: 、

虹の向こう側なんて、
意外とすぐそこさ。
―――― 霧吹き

作者:お題:

落ち込むことはないよ。
下がっても、いつかは必ず上がる。
慢心しちゃいけないよ。
上がっても、いつかは必ず下がる。
―――― エレベーター

作者:お題:

まったく、今時の若いもんは、
スマートだけど、
お辞儀一つ出来やしねえ。
―――― 携帯電話

作者:お題:

別れる理由が「性格の不一致」?
冗談じゃない。
「不一致」の方が、
くっつきやすいものだ。
―――― 磁石

作者:お題: 、

あなたのウインクは、
恋のはじまり。
私のウインクは、
別れのはじまり。
―――― 蛍光灯

作者:お題: 、

人の下で輝く奴だって、
必要だろ?
―――― 靴

作者:お題:

プラスになるのか
マイナスになるのか
よく考えて実行しろ!
ナメられたらこっちの負けだぞ!
―――― ドライバー

作者:お題:

そんなに、
大声で言わなくてもいいのに
と、思うこともある。
―――― スピーカー

作者:お題: 、

三回まわって、わんと言え?
やったところで
お粗末様っていうんだろ?
―――― 茶碗

作者:お題: 、

いつかこの日が来るのを
待っていた!
さぁ、書を捨て、街へ出よう!
交代です。
ガソリンスタンドさん。
―――― 電気スタンド

作者:お題:

わあ~あったかい。
ホカホカで、気持ちいい~ね、
おやすみなさい。
今日も、素敵な物語を夢見てね。
ガリバー旅行記?
ううん、違うよ。
―――― ふとん乾燥機

作者:お題: 、

一筆選評

今回は珠玉の訓が多く、一筆選の選出にあたり、大いに悩みました。「課題部門」についても言えることですが、回を重ねるごとに、投稿作品のレベルが上がっていると感じるのは、私だけでしょうか?

SSじゅうさん作「扇風機」「霧吹き」。ハタ某さん作「エレベーター」。メメ倉さん作「靴」。苦労してこの4訓にしぼり、そのすべてを一筆選としたい気持ちを抑えて最終的に選び抜いたのが、SSじゅうさん作「扇風機」です。

「イエスマンにはならないと/心に決めて生きています。」

力強い意志を秘めて、ひたむきに首を振り、新しい風を生み出し続ける扇風機。その凜とした姿がパッと頭に広がり、メッセージが鮮烈に心に響きました。媚びない、流されない。信念を持つことの大切さを、ビジュアルイメージと共に鮮やかに教えてくれる、素晴らしい一訓です。SSじゅうさんは、イメージを喚起させる達人のようで、別作「霧吹き」でも、「虹」が持つイメージを見事に活用していますよね。

「虹の向こう側なんて、/意外とすぐそこさ。」

夢や希望に満ちた、壮大で美しい虹。それを、身近な「霧吹き」で作る虹と対比することで、日常生活と夢や希望の距離をグンと近づけることに成功しています。手法もさることながら、その発想も凄いと感じ入った次第です。

ハタ某さん作「エレベーター」は、その上下動を、人間の浮き沈みになぞらえた一訓。対比のレトリックで巧みに表現しているところが素晴らしい。

「落ち込むことはないよ。/下がっても、いつかは必ず上がる。/慢心しちゃいけないよ。/上がっても、いつかは必ず下がる。」

これぞ訓、という、王道をゆく秀作です。僭越ながら、あえて1つだけ意見を言わせていただくとするなら、「慢心しちゃいけないよ。」の部分が、「思い上がっちゃいけないよ。」「おごり高ぶっちゃいけないよ。」など「上」や「高」が入った表現になっていると、その対比レトリックは、より完璧なものになると思うのですが、いかがでしょう? ハタ某さんの作品で、もう一訓。「携帯電話」も、新旧の対比を磨き上げた快作で、巧いなぁと感じ入りました。SSじゅうさんが「イメージを喚起させる達人」なら、ハタ某さんはまさに「対比の達人」ですね。

メメ倉さん作「靴」は、ハタ某さんの「エレベーター」とは別の意味の上下関係を扱った秀逸訓です。

「人の下で輝く奴だって、/必要だろ?」

誰かの下で活躍する逸材のプライドが、靴を通してシンプルかつ力強く表現されています。輝く有能な部下がいるからこそ上司やリーダーも輝ける、ということを、実際にビジネスの現場で実感されている方も多いのではないでしょうか。部下の輝きを積極的に讃え、その輝きを糧に、自分の力をさらに磨き高めていく。そうした器の大きな上司やリーダーになりたいものです。

あなたにたこ焼きさんの独特な表現スタイルも魅力的です。不思議と親しみのわく語り口、意外な表現展開……こうした個性的な作品が、物々訓の世界をいっそう広げてくれるのだと思います。素敵な二訓を、ありがとうございました。

今回も、多彩な訓を存分に味わい尽くさせていただきました。ご投稿いただいた皆様、どうもありがとうございました。(一筆)