第15回募集(2014年10月15日~12月14日締切)に寄せられた「自由部門」の作品をご紹介します。
ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!
浮いてるんじゃないかって?
そうだよ。
でも、輪の中心にいる証拠さ。
―――― 浮き輪
そりゃあ、最初は重いさ。
でも、僕の中身が全部
君の頭の中に入ったころ
自然と軽く感じるもんだよ。
―――― ランドセル
あなたとなら
いつ結ばれたっていい。
って言っとけば
いつまでも
ぶら下がってられるんス。
―――― 紐
どうか、誰が一番綺麗だなどと
問わないでください
あなただと、
答えてしまいたくなるから
―――― 鏡
君がずっと探しているもの。
案外手の届くところに
あるもんだよ。
―――― メガネ
一筆選評
今回の「自由部門」の一筆選は、SSじゅうさんのこの一訓です。
「浮いてるんじゃないかって?/そうだよ。/でも、輪の中心にいる証拠さ。――――浮き輪」
中心に立つ者の宿命や心理をユーモアに包んで表現した、実に巧みな一訓です。ユーモアだけでなく深みもあって、とびきり秀逸。同じくSSじゅうさんの一訓「ランドセル」も素敵だなと思い、一筆選の候補に挙げましたが、今回は熟考の末「浮き輪」を一筆選に選びました。
「そりゃあ、最初は重いさ。/でも、僕の中身が全部/君の頭の中に入ったころ/自然と軽く感じるもんだよ。――――ランドセル」
この訓もよいですよね。素敵な言葉を、背中から、子どもにやさしく語りかけるランドセルの姿が目に浮かび、ほっこりジ~ンとします。
常連のSSじゅうさんは、「これぞ物々訓」という、王道を行く名訓をつくる達人ですが、別の一訓「紐」のような、ブラックジョークのエッセンス香り立つ、ちょっと毒のある作品もまた、違った趣でおもしろいなと思いました。
花巻さんの訓も、ユーモアとやさしさに満ちた快作です。
「どうか、誰が一番綺麗だなどと/問わないでください/あなただと、/答えてしまいたくなるから――――鏡」
鏡の複雑な心境を推察しながら、じっくり噛み締めさせてもらいました。(一筆)