物々訓倶楽部

第17回 投稿作品【課題部門】

2015年5月10日

第17回募集(2015年2月15日~4月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。
ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

お題:スーツ

家では見られない素敵なあなたを、
私は知ってます。
―――― スーツ

作者:お題:

ベストを増やしてごらん。
ほら、ピースも増えるでしょ?
―――― スーツ

作者:お題:

大丈夫。
くたびれた分だけ、
さまになっていくからさ。
―――― スーツ

作者:お題:

不安でも期待でも胸を張る
それが大人の身嗜み
―――― スーツ

作者:お題:

身の丈を知らなきゃ
かっこいい大人には
なれないよ
―――― スーツ

作者:お題:

同じ様に見えて、
実は結構違う。
それが分かる頃には、
君もだいぶこなせるように
なっているはずだよ。
―――― スーツ

作者:お題:

一緒にピンと胸を張った日を
忘れないでいれば大丈夫。
―――― スーツ

作者:お題:

あなたがビシッとして見えるのは
8割がた私のおかげですからね
―――― スーツ

作者:お題:

わたしもあなたも
今日は一緒に胸を張っているね
一緒にくしゃくしゃになろうね
くしゃくしゃになったら
そうしたらまた、
一緒にピンと胸を張ろうよ
―――― スーツ

作者:お題:

あれ?いつの間にか鎧にしてる?
たまにはいつもと違う柄のシャツ
着て、好きでも無いネクタイしめ
てみたら?
きっと少し軽くなるから
―――― スーツ

作者:お題:

履くと、背が伸びるのは
ハイヒール。
着ると、背筋が伸びるのが
私。
―――― スーツ

作者:お題:

ちゃんとしよう。
―――― スーツ

作者:お題:

一筆選評

今回の「課題部門」の一筆選は、かんちゃんさんの一訓です。

「家では見られない素敵なあなたを、/私は知ってます。――――スーツ」

今回は秀逸訓が多く、一筆選候補が何訓かあったのですが、熟慮の末、この一訓を選びました。世のお父さんたちの「そうだそうだ、俺は外ではがんばってるんだぞ!」という声が聞こえたような気がしたからでしょうか(笑)

家ではラフな格好でくつろいでいるものだから、家族から「いつもダラダラしてる」とか言われてしまうお父さんも、いったんスーツを着て職場に出れば、シャンとしてバリバリと仕事をこなしているわけで。その素敵な姿を、職場で行動を共にしているスーツは知っている……お父さんたちは、この作品のような言葉をかけられたら、ちょっと嬉しいのではないでしょうか。そんなことを思いながら、この訓を一筆選に選びました。家族がお父さんの仕事風景を見る機会がない、というケースが多いと思うので、仕方のないことではあるのですが、一生懸命働いているお父さんの素敵な姿を家族が知らないとしたら、それはとても残念なことだと思います。

SSじゅうさんの一訓は、実に巧みですね。

「ベストを増やしてごらん。/ほら、ピースも増えるでしょ?――――スーツ」

スーツにまつわる言葉を使いつつ、人生訓とも仕事訓ともとれる、まったく別次元の「訓」として昇華しているところがスゴイ。ベストを尽くし続ければ、ピースできるような成功も増えていく。こうした訓を、スーツを起点にひねり出すというのは、なかなかできることではありません。実におもしろい一訓です。

糸旦さん、凪音さん、玲緒さん、メメ倉さんの次の一訓にも感じ入りました。

「大丈夫。/くたびれた分だけ、/さまになっていくからさ。――――スーツ」(糸旦さん)

「不安でも期待でも胸を張る/それが大人の身嗜み――――スーツ」(凪音さん)

「身の丈を知らなきゃ/かっこいい大人には/なれないよ――――スーツ」(玲緒さん)

「同じ様に見えて、/実は結構違う。/それが分かる頃には、/君もだいぶこなせるように/なっているはずだよ。――――スーツ」(メメ倉さん)

糸旦さんの訓は、かんちゃんさんの訓同様、救いを感じる秀作です。また別の意味で。「努力は無駄にならない。がんばろう!」そう思えてきます。力強い一言「大丈夫。」を冒頭に配しているところも巧いですね。この一言が効いてます。

凪音さんの訓は、「胸を張ることも、身嗜みの一部」という発想が新鮮です。身嗜みというと、スーツはくたびれていないか、Yシャツに皺はないか、ネクタイは曲がっていないかなど、身に着けるものに気をとられがちですが、それ以前に当人がビシッと堂々としていなければ、大人としてかっこよくない。そんな根本的なことを思い出させてくれる秀作です。

玲緒さんの訓は、外見的なスーツをモチーフに、内面的にかっこいい大人の条件を綴った快作です。スーツと親和性のある言葉(身の丈)を巧みに使っていますね。SSじゅうさんの訓と、凪音さんの訓の、ちょうど中間に位置するような作品という印象。メッセージも深く、考えさせられます。

メメ倉さんの訓は、若い人に対して綴ったものですね。スーツは「同じ様に見えて、実は結構違う」。この切り口が素晴らしい。勤め人のスーツは、時にステレオタイプの象徴として取り上げられるけれど、実はそのひとつひとつに個性があるわけで、その奥深さが分からないうちは一人前ではないという、それこそ実に奥深いメッセージとなっています。

というわけで、今回もさまざまな訓をとくと堪能させていただきました。ご投稿いただいた皆さん、ありがとうございました。ではまた次回。ごきげんよう。(一筆)