物々訓倶楽部

第18回 投稿作品【課題部門】

2015年7月10日

第18回募集(2015年4月15日~6月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。
ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

お題:こいのぼり

のぼりつめてこそ
知る空の高さもある。
―――― こいのぼり

作者:お題:

武士は食わねど高楊枝!
やせ我慢してるわけじゃないけど、今日は爽やかな風で腹いっぱい!
―――― こいのぼり

作者:お題:

必死でしがみつくだけ。
逆風に耐えながら。
それだけで
優雅に泳ぐことができるのさ。
―――― こいのぼり

作者:お題:

腹にいちもつもない爽やかさ
風に乗るすがすがしさ…
なのに意外と不自由なんて哀しい

―――― こいのぼり

作者:お題:

向かい風があるくらいが
力がみなぎって
ちょうどいいのさ
―――― こいのぼり

作者:お題:

泳げ
無理、水は無い
風にふわぁ~
ライバルは五月人形
男前を競うぜよ
―――― こいのぼり

作者:お題:

一筆選評

今回の「課題部門」の一筆選は、先月、訓人(物々訓プロジェクト公認作家)に認定されたメメ倉さんの、この一訓です。

「のぼりつめてこそ/知る空の高さもある。――――こいのぼり」

ハッとさせられました。深いですね。スケールやドラマ性も感じます。発想や視点もおもしろい。比較的短い訓ですが、とても力があります。いや逆に、研ぎ澄まされた短い訓だからこそ、キレがあり、印象的なのでしょう。

Yukkomomさんの一訓も、巧いですね。ユーモアが効いていて、なるほどそうきたか!という感じ。

「武士は食わねど高楊枝!/やせ我慢してるわけじゃないけど、/今日は爽やかな風で腹いっぱい!――――こいのぼり」

お腹はからっぽだけど、風で満たされ、颯爽と大空を泳ぐこいのぼり。この様子を「武士は食わねど高楊枝」と表現したYukkomomさんのセンスに拍手です。どんな状況でも、こいのぼりのように颯爽としていたいものですね。やせ我慢も、時には必要……そんな風に思えてきました。

SSじゅうさんの一訓も、Yukkomomさんの作品に通じるものを感じました。

「必死でしがみつくだけ。/逆風に耐えながら。/それだけで/優雅に泳ぐことができるのさ。――――こいのぼり」

実際には必死でも、見た目は優雅。逆に言うと、ツラさを見せず、自分を優雅に演出するということですよね。ステージに立つ仕事でなくても、こういったこと、少なくとも心構えは、多少必要かもしれませんね。シュンとしてたり、グッタリしてたり、アタフタしてたりすると、まわりの人が心配しますから(笑)

junさん一訓は、SSじゅうさんの作品とは逆の発想で綴られています。

「腹にいちもつもない爽やかさ/風に乗るすがすがしさ…/なのに意外と不自由なんて哀しい/ね――――こいのぼり」

こいのぼりは、見た目は爽やかですがすがしいのに、つながれているから不自由……つまり、見た目ほど自由ではないから、哀しい……という話ですね。この「つながれている不自由」を是とするか非とするか。ここが、SSじゅうさんの作品と、junさんの作品の違うところ。前者は是とし、後者は非とする。どちらが正しいということではなく、あくまで、とらえ方の違い。おもしろいですね、とらえ方によって、ベクトルの異なる訓が生まれるという……。このあたりが課題部門の醍醐味ですね。

junさんの訓に話を戻すと……「腹にいちもつもない爽やかさ」、この表現は巧い。特に「いちもつ」という言葉を選んだところが、素晴らしい。「なんにもない」という意味と、「企みがない」という意味のダブルミーニングとなり、訓に深みを与えています。(ちなみに、junさんの投稿では「なのに意外と不自由なんて哀しいね」と1行で記載されていましたが、物々訓には「1行15文字以内」という作法があるため、末尾16文字目の「ね」は自動的に次の行に送られています。読み方によっては、若干、作品の雰囲気が変わるので、一応お知らせしておきますね)

先月、訓人に認定されたPさんの一訓には、「自分はどうかな?」と考えさせられました。

「向かい風があるくらいが/力がみなぎって/ちょうどいいのさ――――こいのぼり」

これは逆に言うと、無風だと力がみなぎらない、ということですよね。風とは、つまり刺激。多少刺激がないと、確かに覇気も薄れていくような気がします。経験的に。やっぱり覇気は大切です。でも、あまり強い刺激は困ります(笑)一方で、個人的には、無風、つまり穏やかな日々が一番、という想いもあります。の~んびり。でも、あまり何もなさすぎると、それはそれで飽きてきそうですが。わがままですね(笑)穏やかだけど、適度に刺激がある。そのくらいがちょうどいい。贅沢ですね(笑)まあ、いろんなタイプの方がいらっしゃると思います。皆さんは、いかがですか?

灯正さんの一訓は、こいのぼりのイメージとのギャップが新鮮です。

「流されるのは、もうイヤ。――――こいのぼり」

大空を颯爽と泳ぐこいのぼりの本音は、意外とこんな感じかも!? 流されてばかり。人間的な観点から言うと、これは確かにツラいですね。こいのぼりの真の姿は、風に乗って泳いでいる姿ではなく、ひょっとしたら、風のない時の、あのしおれた姿なのかも……そんなことを考えてしまいました。

く~こさんの一訓は、「ライバルは五月人形/男前を競うぜよ」の発想がおもしろい。魚を模したこいのぼりが、人を模した五月人形と、男前を競う。つまり、魚が人に挑む!このユーモアに拍手。(物々訓主宰/一筆)