物々訓倶楽部

第19回 投稿作品【自由部門】

2015年9月10日

第19回募集(2015年6月15日~8月14日)に寄せられた「自由部門」の作品をご紹介します。
ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

一度や二度くらいのこと
いちいち気にすんな。
―――― 分度器

作者:お題:

本当は俺もドキドキしてるんだぜ。
―――― 聴診器

作者:お題:

近すぎて、
見えないこともあるから...
―――― 老眼鏡

作者:お題:

モヤモヤしたら
吐き出すに限る。
―――― 換気扇

作者:お題:

デジタルが進み過ぎたの?
バイトばかり増えていくよ。
―――― HDD

作者:お題:

チョコっと一緒にいれたらいいの。
本当はずっと一緒にいたいという
あなたの想い。
―――― 下駄箱

作者:お題:

吸引力とか言ってるけど
わかってないねぇ
はくほうが、大事なんだよ。
掃除の基本は、はく!!
吸っちゃダメだ
はかなきゃ!!
―――― 箒

作者:お題:

辛くても投げ出さないで。
あきらめなければ道は開けるから。
―――― 匙

作者:お題:

あんまりドライにしすぎると
冷たいのねって
勘違いされちゃうよ。
―――― エアコン

作者:お題:

すぐ熱くなるのは
情熱的な証拠だよ!
―――― 湯沸し器

作者:お題:

オレ、オレと主張すること。
勇気がいるけど、とっても大事。
―――― 牛乳瓶

作者:お題:

一筆選評

今回の「自由部門」は全体的に秀作が多く、嬉しい悲鳴を上げました。皆さん、素晴らしいですね。特に次の四訓は甲乙つけがたく、すべてを一筆選に選んでしまいたい衝動にかられました。

SSじゅうさん作「分度器」。

「一度や二度くらいのこと/いちいち気にすんな。――――分度器」

岩井豊さん作「聴診器」。

「本当は俺もドキドキしてるんだぜ。――――聴診器」

天邪鬼さん作「老眼鏡」。

「近すぎて、/見えないこともあるから…――――老眼鏡」

メメ倉さん作「換気扇」。

「モヤモヤしたら/吐き出すに限る。――――換気扇」

それでも、どれか一訓を選ばなければならず、悩んだ末にこの作品を一筆選に選出いたしました。SSじゅうさん作「分度器」です。角度の「1度・2度」と回数の「一度・二度」を掛けてユーモアを持たせつつ、力強くゲキを飛ばしてくれる快作です。正確な分度器には似合わないセリフ……あたかも本音をさらしたような物言いである点もおもしろいですね。分度器にこう言われると、逆に妙に重みや説得力を感じて、「それもそうだな」なあんて思ってしまったりして、ちょっと気が楽になったり。ユーモアと力強い励ましと意外なセリフ……そうしたいろんな要素が溶け合い生まれる味わい深さが、一筆選選出の決定打となりました。

岩井豊さん作「聴診器」も巧いし、おもしろい! 聴診器の機能と巧くからめつつ、さらにちょっと色気も匂わせつつ、聴診器の本音を綴ったユーモア訓。医療機器の機械的でクールな印象とは裏腹のセリフが、実に新鮮です。この「意外なセリフ」という点は、SSじゅうさんの「分度器」と通じるところがありますね。それにしても、と思います。人だって同じですよね。見た目で、人の心は分からない。堂々と構えているように見えて、実は不安でいっぱいとか。逆に、弱々しそうに見えて、実は強気とか。そんなこと、いっぱいありそうですよね。

天邪鬼さん作「老眼鏡」は、静かに胸に染み入る一訓です。家族や夫婦や恋人や友人といった近しい間柄の盲点と老眼を掛け、素直な言葉で深みある格言を綴っておられる。とても印象的で素敵な作品だと思います。

メメ倉さん作「換気扇」は、シンプルでいて力強い一訓です。こうした「シンプルでいて力強い」メッセージ、一見簡単に作れそうな気がするかもしれませんが、実は意外と難しいんです。「換気扇」は、短い言葉で歯切れよく、ユーモアを溶かしつつ格言化することに成功しています。語尾ひとつでも印象は変わります。この一訓では「に限る。」と締めていますが、この表現も成功要因のひとつだと思います。すっと心に入ってきて、ストンと落ちる。苦労の跡は見えない。でもその跡を見せずに、なるほどと思わせるところが、テクニックですね。これは多く秀作に共通する点でもあります。

これら一筆選候補作以外にも、素敵な訓がありました。

SSじゅうさん作「HDD」。

「デジタルが進み過ぎたの?/バイトばかり増えていくよ。――――HDD」

これは、情報量の単位「バイト」と「アルバイト」を掛け、雇用問題に触れた社会派の一訓。こういった作品は比較的少ないので、新鮮でした。

あなたにたこ焼きさん作「ゴミ袋」。

「ゴミをいっぱい捨てるために、ぼ/くも同じゴミになるんだ。――――ゴミ袋」

身を挺してゴミを捨てる宿命を背負う「ゴミ袋」のセリフを、あえて朴訥とした言葉で綴ることで、逆に重みや哀愁を増幅することに成功しています。

ヅキーさん作「匙」。(訓号に「さん」が含まれているので、敬称「さん」は省略させていただきました)

「辛くても投げ出さないで。/あきらめなければ道は開けるから。――――匙」

「匙を投げる」から発想した、前向きな励まし訓。心が折れそうになった時は、匙を握り、この訓を思い出したいと思います。(物々訓主宰/一筆)