物々訓倶楽部

第27回 投稿作品【自由部門】

2017年1月16日

第27回募集(2016年10月15日~12月14日)に寄せられた「自由部門」の作品をご紹介します。
ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

当たった夢を売ってるんじゃない
楽して稼げる人間はいないって事

教えてるんだ。

―――― 宝くじ

作者:お題:

あなたがいなければ、
私は走り出せない
―――― 自転車

作者:お題:

たとえワンバンでも

キャッチしてもらえばいいのさ

思いきりよくいこ!
―――― 野球ボール

作者:お題:

俺ならいくらはたいてもいいぜ
―――― かるた

作者:お題:

一筆選評

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。にぎやかな年末年始もアッという間に過ぎて、もう1月中旬。1年のはじまりなのに、なんとなく祭の後のような、微妙なこの時期、皆さんはいかがお過ごしですか?今年は酉年。飛べない「酉(鶏)」ではなく、羽ばたく「鳥」の年にしたいものですね。2017年が、皆さんにとって飛躍の年になりますように!本年も、物々訓をどうぞよろしくお願いします。

さて、今回の「自由部門」の一筆選をご紹介します。岩井豊さんの、この一訓です。

当たった夢を売ってるんじゃない
楽して稼げる人間はいないって事

教えてるんだ。

        ――――宝くじ

名言ですね。これぞ物々訓!という傑作です。「宝くじ」を逆説的にとらえ、実に深みある格言を紡ぎ出すことに成功しています。文句なしの一筆選。ただひとつだけ惜しいのは、2行目が16文字だったこと。物々訓には「1行、15文字以内」という作法があるため、末尾の「を」だけが3行目に送られてしまいました。ご本人の投稿では「楽して稼げる人間はいないって事を」と1行で表記されているので、そこだけがちょっと残念だなぁと思いました。

ちなみに「1行、15文字以内」の作法について、「16文字目に句読点か閉じカッコがくる場合のみ、1行16文字となっても良い。」という特例があることもお伝えしておきますね。

花巻さんの一訓も素敵です。シンプルでいて、実に味わい深い。

あなたがいなければ、
私は走り出せない
  ――――自転車

あたりまえのことを素直に語るだけで、これほど深みが出るとは驚きです。「あなた」の背中を押す、優しさに満ちた前向きな訓ともとれるし、パートナーの大切さを説く訓ともとれる。さらには、切なさを訴える訓とも……。ひと言、わずか2行ゆえ、いろんな行間の読み方ができるのでしょう。文章っておもしろいですよね。「あたりまえのことを素直に語っている」のではなく、実は「あたりまえのことを素直に語っているように見せている」……そんな風にさえ感じられるこの一訓は、やはり深いなぁと思います。一方、メッセージという観点で考えると、多様な解釈を生むというのは賛否が分かれるところだと思います。が、物々訓は文芸なので、それはそれで味わいかなと。

この他、ヅキーさんの前向きな励まし訓「野球ボール」や、ユニーク訓「かるた」も印象的でした。

最後にひとつ。ヅキーさんから「みかん」「汗染み」という訓をお寄せいただいたのですが、物々訓で扱うのは人工物に限るという作法がありまして……残念ながらサイトに掲載できないため、ここで紹介させていただきます。

知っといた方がいい

いつかはみんな腐るってこと
      ――――みかん

脇の下に世界地図を
  ――――汗染み

(物々訓主宰/一筆)

※「課題部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。