物々訓倶楽部

第29回 投稿作品【自由部門】

2017年5月10日

第29回募集(2017年2月15日~4月14日)に寄せられた「自由部門」の作品(選抜20訓)をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

君の足が大きくなるのが早いか
走り回って底がすり減るのが先か
どっちにしても
それが僕の喜びなんだよ
―――― 子供靴

作者:お題:

敷かれたレールの上を走る、
どこが悪い?


―――― 電車

作者:お題:

重たいってぼやくなんて
あなたちょっとひどいわよ?
自覚があるか分からないけど、
半分はあなたのせいだったり
するんだから。
―――― パソコン

作者:お題:

なにも歩いてる時まで
かまってくれなくていいんだよ。
君ならもっとスマートに
僕と付き合えるはず。
―――― スマホ

作者:お題:

私はただ
お祈りをしてくれた人に
少しの勇気と
少しの希望を
あげてるだけ
―――― 仏像

作者:お題:

どこへ行くのかを決めるのはきみ
僕の役割は安全第一それだけさ
さぁ 新しい冒険が始まる
―――― 車椅子

作者:お題:

女心と秋の空
俺の心は君の物
―――― リモコン

作者:お題:

わくわくしてるのは分かるけど
そんなに見つめないでくれないか
ちゃんと時間通りに働くし
終わればちゃんと知らせるから。
チンって音を立てるから。
―――― 電子レンジ

作者:お題:

君が仕事で穴を開けた時は、
私も一緒に謝ってあげる。
君の為なら私、
何度でも頭を下げてあげる。
―――― 穴開けパンチ

作者:お題: 、

着替えでも化粧品でも
重たいものでもかさばるものでも
必要なものはなんでも
詰め込むことができるんだ
でもこれだけは入れ忘れないで
夢と希望を
―――― かばん

作者:お題:

泣きながら宿題をやった日も
夜遅くまで試験勉強をした夜も
初めてラブレターを書いた時も
いつも一番近くにいたのは
そう、僕だった

―――― 学習机

作者:お題:

別に、僕はいいですけど。
ホック、留まってませんよね?
上着のボタン、外さない方が。
大福みたいになってますよ?
別に、僕は構いませんけど。
痩せた方が、いいですよ?
―――― ビジネススーツ

作者:お題:

耐えましょう。
熱さにも
冷たさにも
時に転落事故に遭おうとも。
―――― コップ

作者:お題:

恋人たちの時間はな
わしが少しだけ
遅らせるんじゃ
―――― 時計

作者:お題:

君は変わってしまったね
昔は「大事にするね」って
今は「あ、落ちちゃった」って

丈夫な僕もひどい扱いばかりじゃ
ひねくれちゃうよ?
―――― 眼鏡

作者:お題:

どう?世界が明るくなっただろ?
慣れるまでは
鼻がちょっと痛いかもね。
長い付き合いになるから
大事にしてくれよ。
―――― メガネ

作者:お題: 、

もたれてもいいよ
つかまってもいいよ
辛いときは
いつでも君を支えるよ
―――― つり革

作者:お題:

つかって~
つかって~
ぼく消える~
―――― 石鹸

作者:お題:

一筆選評

穏やかに降り注ぐ陽射し。キラキラと照り輝く景色。その間を爽やかに吹き抜ける春風。気持ちよくて、思わず深呼吸したくなります。日中は半袖で、気分も軽快。これほど過ごしやすい時期も、一年を通じてそうはないので、存分に満喫したいものです。

さて、この度はたくさんの作品投稿を、ありがとうございました。特に賞品があるわけでもない物々訓の募集に、たくさんの方が興味を持ってくださったこと、心から嬉しく思います。募集情報を取り上げてくださった『公募ガイドONLINE』にも、この場を借りてお礼申し上げます。

お寄せいただいた訓(物々訓では、作品を「訓」とも呼びます)を、すべて当コーナーで紹介したいところなのですが、ここでの紹介は課題部門、自由部門それぞれ20訓までという決まりがあるため、断腸の思いで選抜させていただきました(紹介できなかった訓の作者の皆さん、すみません)。

ただ、ここで紹介しきれなかった訓も、物々訓サイトでは公開しておりますので、ぜひご覧になってみてください。サイトの右上にある検索窓に、作者名や物の名前を入力して検索すると見つけやすいです。

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今回の「自由部門」の一筆選(物々訓主宰・一筆の厳選一訓)をご紹介します。もがきたさんの、この一訓です。

君の足が大きくなるのが早いか
走り回って底がすり減るのが先か
どっちにしても
それが僕の喜びなんだよ
        ――――子供靴

やさしさに満ちた、素敵な訓ですね。心がホッコリします。その一方で……ちょっぴり哀しい。子供は成長が早いし、活発だから、「子供靴」はそう遠くない未来に役目を終え、持ち主とお別れする日がやってきます。その短いひと時を子供と過ごすために生まれてきた物……なのですが、その心中を想うと複雑な気持ちになります。喜ばしい、子供の成長。それが進行するほど、自らの人生(物生?)の終わりが近づいてくる。その儚い一生、かけがえのないひと時を、子供を想いながら、精一杯、生き抜く。どこか親の心境に近いものを感じます。胸がジンと熱くなります。「子供靴」は言います。子供の成長を感じながら、役目を終えること、寿命を迎えること、そのどちらもが喜びなのだと。「子供靴」、大切に扱わないといけませんね。

頽齢の貴公子さんの一訓も、グッときました。

敷かれたレールの上を走る、
どこが悪い?

      ――――電車

潔いお言葉!「電車」が言うと説得力ありますね。開き直ってる……というより、強い信念を感じます。「敷かれたレールの上を走る」って、あまりよくないニュアンスで使われることが多いけれど、なにも悪いことなんてありません。それも、ひとつの生き方。素敵だと思います。この「電車」のように、堂々と胸を張って、敷かれたレールの上を走ればいい。どんな生き方だって、苦労がない、なんてことはない。みんな、それぞれの境遇の中で、がんばって生きているんだ。そんな風に思います。

鈴乱さんの一訓には、頭が下がりました。いや、頭を下げました。

重たいってぼやくなんて
あなたちょっとひどいわよ?
自覚があるか分からないけど、
半分はあなたのせいだったり
するんだから。
     ――――パソコン

僕もちょくちょくボヤいてます、「重いなぁ」って(笑)きちんと立ち上がるのに10分以上かかりますからね、僕のパソコン。でもそれは、自分がたくさんのデータを蓄積してきた結果でもあるわけですよね。もちろんパソコンのスペックもあるとは思いますが、それにしてもパソコンだけに責任に押しつけるなんて、確かになんとも無責任。「日頃、大変お世話になっているのに、失礼しましたm(_ _)m」と、いまこの文章を打ちながらパソコンに頭を下げました。

この他にも、素敵な訓がいろいろ。人間関係に置き換えて「歩きスマホ」を巧みに戒める、もがきたさんの「スマホ」。謙譲の美徳が胸に染み入る、蛙本 ミウタさんの「仏像」。前向きなセリフが心地よい、中山優さんの「車椅子」、等々。

もっと紹介したい訓はあるものの……長くなってしまうので、今回はこのあたりで切り上げることにいたします。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。またの投稿をお待ちしています。(物々訓主宰/一筆)

※「課題部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。