物々訓倶楽部

第29回 投稿作品【課題部門】

2017年5月10日

第29回募集(2017年2月15日~4月14日)に寄せられた「課題部門」の作品(選抜20訓)をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

お題:花瓶

王子様と薔薇の花束を待ってる?
それより、
道端のタンポポと僕から
始めてみない?
―――― コーラの空き瓶

作者:お題: 、

俺だけじゃ、
わかんないよな
俺の価値。
―――― 花瓶

作者:お題:

単なる引き立て役かといえば
そうでもなく
かといって主役でもない
私はあなたを時に生かし
また同時にあなたに活かされる
―――― 花瓶

作者:お題:

棘があっても
曲がっていても
下を向いていても
どんな咲き方(いきかた)だって
僕は受け入れるよ
―――― 花瓶

作者:お題:

大好きよと笑顔で受け取る花束を
活ける花瓶の水は換えられず
濁りゆく水、透けて見える彼女

―――― 花瓶

作者:お題:

綺麗に見えるでしょ
薔薇の花を抱えるあたし
でも腹ん中はどうでしょ
ぬめった感情が渦巻いてるのよ
だからこそ
綺麗に見えるものなのよ
―――― 花瓶

作者:お題:

ねぇ貴方の心の花、
少しの水で足りますか?
―――― 花瓶

作者:お題:

大きなホールに大先生が
大きく派手に大量に
大輪の花を大切そうに
大勢の弟子と大汗かいて
大方今日も大金かけて
大柄なわたしに生けてます。
―――― 花瓶

作者:お題:

失恋したのね。

あなたの涙が増えるほど、
私のお水は少なくなっていくわ。
―――― 花瓶

作者:お題:

誰にでも必要ってわけじゃ
ないけれど
誰かには絶対必要。
それでいい。

―――― 花瓶

作者:お題:

弘法は筆を選ばず

もとい、花瓶は花を選ばず

どんな花も華やかに見せたる!
―――― 花瓶

作者:お題:

欠けたコップや牛乳瓶でも
それがなければ
バケツでもいいんだよ
ただ花を愛しく思い
生けたいという気持ちがあれば
誰だってなれるんだ
―――― 花瓶

作者:お題:

誰かを生かす仕事もわるくないよ。
―――― 花瓶

作者:お題:

今、こうして花を飾ってもらう事を
想像してなかったわ~
私を作ってくれた時、あなたは
『これで美味いビール飲むぞ』
と、言ってたような
―――― 花瓶

作者:お題:

君が倒れそうになっても、
最後のその時まで、
全力で支えるからね。
―――― 花瓶

作者:お題:

私、生涯バイプレーヤーですわ。
花より目立ったらあきまへん。
その花の良さをうまく引き出す
それが私の使命だす!
―――― 花瓶

作者:お題:

にぎやかなコイツも
孤高のアイツも
そっと包んでいるのです
―――― 花瓶

作者:お題:

あなたの艶めいた輝きを
その甘く優雅な香りを
1番近くで感じていたい
あなたが散りゆく
その一瞬まで
わたしならば見逃さない
―――― ガラスの花瓶

作者:お題: 、

一筆選評

穏やかに降り注ぐ陽射し。キラキラと照り輝く景色。その間を爽やかに吹き抜ける春風。気持ちよくて、思わず深呼吸したくなります。日中は半袖で、気分も軽快。これほど過ごしやすい時期も、一年を通じてそうはないので、存分に満喫したいものです。

さて、この度はたくさんの作品投稿を、ありがとうございました。特に賞品があるわけでもない物々訓の募集に、たくさんの方が興味を持ってくださったこと、心から嬉しく思います。募集情報を取り上げてくださった『公募ガイドONLINE』にも、この場を借りてお礼申し上げます。

お寄せいただいた訓(物々訓では、作品を「訓」とも呼びます)を、すべて当コーナーで紹介したいところなのですが、ここでの紹介は課題部門、自由部門それぞれ20訓までという決まりがあるため、断腸の思いで選抜させていただきました(紹介できなかった訓の作者の皆さん、すみません)。

ただ、ここで紹介しきれなかった訓も、物々訓サイトでは公開しておりますので、ぜひご覧になってみてください。サイトの右上にある検索窓に、作者名や物の名前を入力して検索すると見つけやすいです。

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今回の課題部門のお題は「花瓶」です。お題を発表する際に、「物の名称をそのまま『花瓶』としなくても、『一輪挿し』など、『花瓶』に属する物であればOK、柔軟に考えてください」といった趣旨のことを書いたので、その通り、頭を柔らかくして「物の名称」を付けてくださった方もいらっしゃいました。

その中のお一人、「コーラの空き瓶」を「花瓶」として扱った、詩のぶさんの一訓がとても素敵だったので、今回の一筆選(物々訓主宰・一筆の厳選一訓)に決めました。

王子様と薔薇の花束を待ってる?
それより、
道端のタンポポと僕から
始めてみない?
    ――――コーラの空き瓶

「王子様と薔薇の花束」と「道端のタンポポとコーラの空き瓶」の極端な対比が効いていますね。「夢見てばかりいないで、まずは身近なところで、できることからはじめてみようよ。喜びや幸せって、意外と身近なところにあるんだよ」、そんな風に語りかけているように聞こえます。深みあるメッセージを、重くならないようユーモアをまぶしながら四行に凝縮した快作です。

鈴乱さんの一訓は、噛めば噛むほど味がでます。

俺だけじゃ、
わかんないよな
俺の価値。
 ――――花瓶

セリフの趣旨自体は、「花があってこその花瓶」という比較的ベーシックなものですが、じっくり味わうと、実は深みがあって、含蓄に富んでいます。言い回しの巧さが、この訓の味わいをグンと深めているようです。「花瓶」が自問自答しているような雰囲気もあって、心の中のつぶやきを聞いているような、妙に生っぽい印象を受けました。その効果で、感情移入もしやすくなっています。

考えてみれば、僕らだって「花瓶」と同じですよね。人間、自分の価値なんて、自分だけではなかなか分からないものですから。他者や社会との関わりを通して、はじめて、おぼろげながら「これが自分の価値なのかも」と思えるものが見えてくる。そんなものではないでしょうか。でもその価値は、意外と第三者の目には鮮明に映っているのかもしれませんよ。花と花瓶が織りなす美しい景色を眺め、僕らがその価値を実感するように。

もがきたさんの一訓も、胸に響きました。

単なる引き立て役かといえば
そうでもなく
かといって主役でもない
私はあなたを時に生かし
また同時にあなたに活かされる
        ――――花瓶

人間って、「花瓶」に似てますね。前出の鈴乱さんの訓でもそう思いましたが、この訓を拝読して、さらにその思いが強くなりました。

何かの節目などに稀に主役になることもあるけれど、ほとんどは脇役として生きている。そんな実感を持っている方、多いのではないでしょうか(僕も、その一人です)。ドラマならともかく、現実の世界で主役一筋なんて人は恐らくいません。主役としてスポットライトを浴びることが多い人だって、どこかでは脇役を演じているはずです。みんな社会の一員として生きているわけですから、それも当たり前のことですよね。配役は、その時々によって変わるわけですから、主役だ脇役だなんてことは気にせず、さまざまな関係の中で、お互いを生かし合うことが大切なのだと思います。そんなことを考えさせられた一訓でした。蛇足ながら、「生かし」「活かされる」と漢字を使い分けているあたりも巧いなぁと思いました。

僭越ながら、最後の二行を少しだけシンプルにすると、より印象が際立つのではないかと思いました。下記、ご参考まで。

単なる引き立て役かといえば
そうでもなく
かといって主役でもない
私はあなたを生かし
あなたに活かされる
       ――――花瓶

この他にも、味わい深い訓がたくさん。いろんな花の咲き方を人間の生き方になぞらえた、月小町さんの訓。女性の笑顔や美しさの裏側を描き出した、べさんと、もちさんの訓(べさんの「濁りゆく水、透けて見える彼女」の表現は秀逸でした。拍手)。「一輪挿し」ならではのプロポーズを一言で綴った、書留西洋さんの訓。忘れずに花に水をあげよう……思わずそんな気持ちなる、茉弥さんの訓。「大」の字を「大」量に使った、朽材さんの「大」作(スゴイです!)。「あなたの涙が増えるほど、/私のお水は少なくなっていくわ。」の表現が素敵な、aliyさんの訓。どれも印象的で、味わい深い作品でした。

この他にも紹介したい訓がまだまだありますが、今回はこのあたりで失礼して、筆を置かせていただきます。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。またの投稿をお待ちしています。

(ちなみに、僕が以前書いた「花瓶」の訓は、こんな感じです)

たとえ花がなくても、
華のある存在でありたい。
―――― 花瓶

作者:お題:

(物々訓主宰/一筆)

※宮嶋美詠子さんの訓の「物の名称」部分が、原文では「花瓶のターニングポイント!?」となっていましたが、末尾に記載するのは「物の名称」という作法があるため、勝手ながら「花瓶」とさせていただきました。

※「自由部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。