物々訓倶楽部

第30回 投稿作品【課題部門】

2017年7月10日

第30回募集(2017年4月15日~6月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

お題:万年筆

長生きの秘訣ねぇ
毎日よく喋ることかねぇ
―――― 万年筆

作者:お題:

インクなら足りています
渇望しているのは
あなたの言葉なんです
―――― 万年筆

作者:お題:

万という字も、
書き始めは一だね。
先の事は大事だけど、
軸となるのは、まず今だよ。
―――― 万年筆

作者:お題:

中学生向き雑誌の定期購読に付い
てたワタシ
同窓会じゃ「あるある~」ネタだ
けど
今でも現役なのよね
―――― 金の万年筆

作者:お題:

まずは形から入ってみるのも
悪くないと思うよ
―――― 万年筆

作者:お題:

素敵な贈り物だと言われたり
年寄りくさいと言われたり
時代変わればなんとやら
人の心は移り気よ

―――― 万年筆

作者:お題:

いつの間に こんな高嶺の花に
なってしまったんだろうか
それでも心は変わっていない
隣のボールペンや鉛筆と同じ
君の心に残る言葉を書くことしか
考えていないんだよ
―――― 万年筆

作者:お題:

君次第で
仕上がりは
どうとでも変わるよ。
気に入らなかったら
何度でも書いたらいい。
人生のページのように。

―――― 万年筆

作者:お題:

大丈夫

一画一画に

想いは宿ってるよ
―――― 万年筆

作者:お題:

継続はチカラなりって、ほんまや

来たばっかりの時いつも筆箱の中
今は、手元のタブレット横が特等

先発・リリーフいつでもOKやん
―――― 万年筆

作者:お題:

棋譜を書く時、よく解るよ
高揚してる時、やっちゃった~な

手にとるようにじゃなく
指にこめたチカラで
―――― 入学祝の万年筆

作者:お題:

一筆選評

今回の課題部門のお題は「万年筆」。一筆選は、詩のぶさんの二訓で悩みましたが、結果、この一訓に決めました。

長生きの秘訣ねぇ
毎日よく喋ることかねぇ
    ――――万年筆

そして、悩んだもう一訓は、こちら。

インクなら足りています
渇望しているのは
あなたの言葉なんです
    ――――万年筆

まずは一筆選の訓から。万年筆をご老人に例えた秀作です。「長寿」を象徴する名を持つ万年筆は、実際も、歴史ある「長寿」の筆記具。「長寿」のご老人と、ぴったりイメージが重なりますね。微笑みながら穏やかに話す姿が、目に浮かぶようです。そのセリフは人間味と滋味に満ちあふれ、胸に深く染み入ります。言葉を綴ることを、人が喋ることになぞらえているところも、巧いですよね。万年筆は毎日使うことが何よりのメンテナンスになるらしいので、その点においても、万年筆の特性を巧く活かしたセリフと言えるでしょう。

もうひとつの「インクなら足りています」の訓は、趣向がガラッと異なり、万年筆が秘めた切実な想いを吐露した快作です。僕はこのセリフを読んで、胸の内で静かに燃える高温の炎を連想しました。「黙ってないで、もっと私を使って自分の想いを表現して。こちらの準備は万端なんだから」……そんな熱い想いがヒシヒシと伝わってきます。巧いなぁと思います。インクの液体のイメージと、「渇望」という言葉の絶妙なギャップが効いています。僕も何本か万年筆を持っているのですが、たまにその美しい姿を鑑賞したり、インクを変えてみたり、メンテナンスをするだけで満足してしまい、日頃はあまり使うことなく、インクを満タンにしたまま筆入れに入れっぱなしに……(苦笑)でも、万年筆は言葉を綴るために生まれてきた物。使われないということは、自分の存在を否定されているようなものですよね。今日はこれから万年筆で、自分の言葉を綴ってみようと思います。

メメ倉さんの一訓は、目のつけどころが秀逸な佳作です。

万という字も、
書き始めは一だね。
先の事は大事だけど、
軸となるのは、まず今だよ。
     ――――万年筆

「万」の書きはじめは「一」。なるほど! 万里の道も一歩から。万里の長城は一日にして成らず。そんなことわざはありませんが、そういうことですね。将来への起点となる今を、その一日一日を、大切に生きよう。素敵なメッセージです。蛇足ながら、「初心を大切に」というテーマでも、きれいにまとまりそうですね。

ピリッとスパイスの効いた、零型さんの一訓も印象的でした。

新人諸君!喉が渇いた。
 ――――高級万年筆

購入者たち(万年筆初心者?)に、ちょっと偉そうにインクの補給を求める高級万年筆。それは、お偉いさんが新人たちに「お茶!」とふんぞり返っている姿と重なります。単なる「万年筆」ではなく、「高級万年筆」としているところがミソですね。「高級」に「高給」という隠し味も加わり、ピリ辛度アップ。短いセリフに豊富なスパイスを溶かしたユーモア訓。快作です。

宮嶋美詠子さんの一訓は、年を重ねた人たちがちょっぴり元気をもらえる作品。

中学生向き雑誌の定期購読に付い
てたワタシ
同窓会じゃ「あるある~」ネタだ
けど
今でも現役なのよね
      ――――金の万年筆

おっ、中学生向けの雑誌に万年筆がついていたんですか? 素敵! 子供雑誌にいろいろ付録がついていたのは覚えているのですが、その中に万年筆もあったんですね。いま見つけたら、思わず買っちゃいそうです(笑)それはそうと、作品のほうも素敵です。年を重ねても、ずっと現役。励みになりますね。万年筆の名に恥じない立派な姿勢を、ちょっと自嘲気味におもしろおかしく語っているところもナイスです。きっとこの金の万年筆は、長い年月に磨かれた、いぶし銀ならぬ「いぶし金」の輝きを放っていることでしょう。僕らも見習って、へこたれずに、働けるうちは現役で輝いていたいものですね。

この他にも、味わい深い訓がたくさん。

移ろいやすい、人の価値観。その儚さをかみしめる、鈴乱さんの訓。高嶺の花になってしまった今も、想いは変わらない……万年筆の一途な想いが沁みる、aliyさんの訓。文章も人生も、自分次第で何度でも書き直せる……そんな励ましをくれる、starさんの訓。一画一画、想いを込めて丁寧に文字を綴る人の姿が目に浮かぶ、ヅキーさんの訓。それぞれの味わいを、しっかり堪能させていただきました。

もっと紹介したいところですが、今回はこのあたりで失礼して、筆を置かせていただきます。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。またの投稿をお待ちしています。

(ちなみに、僕が以前書いた「万年筆」の訓は、こんな感じです)

(物々訓主宰/一筆)

※「自由部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。