物々訓倶楽部

第31回 投稿作品【自由部門】

2017年9月10日

第31回募集(2017年6月15日~8月14日)に寄せられた「自由部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

僕に掴まれるようになるまでは
誰かとちゃんと手を繋いでいて
そして
僕に掴まれるようになったら
今度は誰かの手を
しっかり握ってあげるんだよ
―――― 吊り革

作者:お題:

火をともしてみないと
その人の本当の輝きは、
わからないものだぜ。
―――― 花火

作者:お題:

昨日の敵は今日の友

ほんとそう
―――― オセロ

作者:お題:

あのね、
そうやってそこから
眺めてるだけじゃ、
見える世界は
変わらないのよ?
―――― 窓

作者:お題:

寄り添う二人

俺、今だけ1.5人掛け
―――― ベンチ

作者:お題:

清濁あわせ飲んでやらぁ
―――― 排水口

作者:お題:

何かをすくうために
生まれてきたんだけどなぁ
―――― 匙

作者:お題:

ボクのパチリという音は
どんなときも
キミの思考に区切りをつける
でも
いつも丁寧に磨いてくれて
ありがとう
―――― 将棋の駒

作者:お題:

いや、そんなに睨まないでくれよ
小指をぶつけたのは
そっちだろう?
―――― タンス

作者:お題:

ホコリはあなたが払ってくれるし
気温はいつもちょうどいい
だけど、同じポーズってのは、
ちょっときついものがあるんだぜ。
―――― フィギュア

作者:お題:

一筆選評

今回の「自由部門」の一筆選は、物々訓の新星・詩のぶさんの一訓です。

僕に掴まれるようになるまでは
誰かとちゃんと手を繋いでいて
そして
僕に掴まれるようになったら
今度は誰かの手を
しっかり握ってあげるんだよ
       ――――吊り革

詩のぶさんは、前々回(初投稿)、前回と二連続で「課題部門」の一筆選を獲得し、作訓開始から間もないながら、早くも名人の風格漂う逸材。今回、「自由部門」にお寄せいただいた訓も素晴らしい作品でした。中でも「吊り革」は、胸を打つ珠玉の一訓。深く感じ入りました。語り口もメッセージも、あまりにも温かい。そして六行に息づく、確かな筆力。「そして」の一行を間に置き、その前後で「僕に掴まれるようになる」前と後のメッセージをシンメトリーな印象になるよう配置しているあたり、巧いなと思います。美しくて、読みやすい。メッセージと見た目、両方の構図にしっかり気を配っていることが、よく見てとれます。

詩のぶさんの、この訓にも一言。

あのね、
そうやってそこから
眺めてるだけじゃ、
見える世界は
変わらないのよ?
    ――――窓

立ち止まっている人の背中をそっと押す快作です。絵が浮かぶような作り、無理強いしないやさしさを感じさせる末尾の「?」など、この訓でも鮮やかな筆力が遺憾なく発揮されていますね。

そして、松本 雄大さんの「花火」と、ヅキーさんの「オセロ」。この二訓もクオリティが高い。詩のぶさんの「吊り革」がなかったら、どちらかを一筆選に選んでいました。では、まずは松本 雄大さんの「花火」から。

火をともしてみないと
その人の本当の輝きは、
わからないものだぜ。
    ――――花火

「物」としての花火と、そこから吹き出す火花の美しい輝き。そのギャップを、人に置き換えて作品化。花火の特徴を、深みと美しさを兼ね備えた訓へと昇華した傑作です。この訓自体が、花火のように輝いている!お見事です。

次に、これまでの活躍が高く評価され、今年五月にめでたく「訓人」(物々訓プロジェクト公認作家)となったヅキーさんの一訓です(関連記事はこちら)。

昨日の敵は今日の友

ほんとそう
  ――――オセロ

なるほど!と思わず膝を打ちました。目のつけどころ素晴らしい。オセロも、意外と教訓に富んだゲームなんですね。この訓にあるように、アッという間に白黒が逆転して「昨日の敵は今日の友」になることもありますし、盤の真ん中あたりでちょこちょこ戦っているより、大きな視野をもって四隅を制したほうが勝てるという「大所高所」的なこともある。考えてみると、他にもいろいろありそうですね。こうやって、ひとつのゲームを通してさまざまな教訓を引き出してみるのも楽しそう。オセロ、将棋、囲碁、チェス、トランプ……う~ん、奥が深そう!

そして、話の流れにピッタリな、うすた~さんさんの「将棋の駒」。ふたつのボードゲーム訓が顔を合わせるとは、偶然ですね。

ボクのパチリという音は
どんなときも
キミの思考に区切りをつける
でも
いつも丁寧に磨いてくれて
ありがとう
     ――――将棋の駒

パチリ。将棋を指す時の、あの凜とした音が、心の耳に響きます。あの音が、思考に区切りをつける。確かに、そうですね。学校のチャイムや、ボクシングのゴングと近いかもしれません。音って重要。人の心に、大きく作用しますから。サイレン、クラクション、機械の操作音、電話の着信音、電車の発車メロディ、目覚ましのアラーム、声、拍手、音楽……僕らは、膨大な人工音に囲まれて生きています。これに自然音も加わっているのですから、世の中はなんとも騒がしい(笑)  それぞれの人工音が持つ意味合いはさまざまですが、それらが僕らの心を大なり小なり動かしている。そう考えると、ちょっと怖い。……話が少々飛躍しましたが、そんな壮大な思考(?)へと導いてくれた一訓でした。僭越ながら、「でも」以降の三行を思いきって割愛すると、論点がすっきりして、より力強い訓になるかも、と感じました。「でも」以降の三行も、温かくて素敵なセリフなのですが。……ご参考まで。

今回はこのあたりで失礼して、筆を置かせていただきます。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。またの投稿をお待ちしています。

蛇足ながら、最後に僕も二訓ほど。「洗濯機」のダジャレ連作です(笑)※上は新作、下は旧作。

引っ越しするの?
いいセンタクじゃん。
真っ白い気分で
羽ばたきな。
―――― 洗濯機

作者:お題: 、

ピッピッピッで
グ~ルグル。
洗濯機というより
選択機だな、もはや。
―――― 洗濯機

作者:お題: 、

(物々訓主宰/一筆)

※物々訓には、一行、十五字以内(十六字目に句読点か閉じカッコがくる場合のみ、十六字となってもよい)、本文行数、六行以内という作法があります。今回うすた~さんさんから「液体洗剤」という訓をお寄せいただいたのですが、二行目が十六字(字数オーバー)で、作法から外れてしまっていたため、大変申し訳ないのですが、選外とさせていただきました。この訓は、行数の上限である六行をフルに使ったものでしたので、改行することもできず、断念いたしました。サイトに掲載できないため、ここで紹介させていただきます。

ボク、今、かなり多機能
白くするだけじゃない匂いも消せる
思い出は消せないけど
まっさらにできる
キミのスタートのお手伝いは
できると思うよ
        ――――液体洗剤

※「課題部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。