物々訓倶楽部

第31回 投稿作品【課題部門】

2017年9月10日

第31回募集(2017年6月15日~8月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

お題:ハンカチ

涙も汗も喜んで拭こう

でも尻拭いできるのは

きみ自身だけなんだ
―――― ハンカチ

作者:お題:

もっと汗かいて

涙流していいんだよ

洗って乾かせば元通りだから
―――― ハンカチ

作者:お題:

今日の君は、
えらい取り澄ましているけれど、
本当の君はおてんばで、
泣き虫で、
忘れんぼだ。
僕が保証する。
―――― 膝に置かれたハンカチ

作者:お題:

さりげなく僕を落とすんだ。
僕がきみの
恋のキューピッドになろう。
―――― ハンカチ

作者:お題:

あなたの一生懸命頑張った汗も、
悲しみにくれた日の涙も、
嬉しくて感動したときの涙も、
残らず吸い取ってあげる。
―――― ハンカチ

作者:お題:

手をふいて
汗をぬぐって
涙を止めて
たくさんあなたに尽くした中で
いちばん好きなのは
あなたの胸で眠ること
―――― ハンカチ

作者:お題:

どうか、たくさん連れだして
その思い出で染めて
―――― ハンカチ

作者:お題:

小学校から中学卒業まで
使ってくれて、ありがとう
今は、お母さんが飾ってる
先生のサインは読見づらいけど
―――― 漫画家サイン入りハンカチ

作者:お題:

いい加減、ワタシをカノジョに
返しなよ
メモ挟んだまんまだし

いつでも返せるようになったから
って、初心に戻らなきゃ
―――― 小花柄のハンカチ

作者:お題:

ね、相変わらずの女子力!?の高さ 
というか、気遣い、やさしさかな
部長の異動・送別会の
お返しとしてのボク
チームのみんな、感動してるよ
―――― タータンチェックのハンカチ

作者:お題:

花嫁が身に着けるものとして
ヒーローの持ち物として
けっこう出番は多いほうかな、と
―――― 青のハンカチ

作者:お題:

一筆選評

今回の課題部門のお題は「ハンカチ」。一筆選は、これまでの活躍が高く評価され、今年五月にめでたく「訓人」(物々訓プロジェクト公認作家)となったヅキーさんの一訓です(関連記事はこちら)。

涙も汗も喜んで拭こう

でも尻拭いできるのは

きみ自身だけなんだ
  ――――ハンカチ

王道感のある快作、さすがです。歯切れのよい語り口。余韻を生む、行の空白(ヅキーさんの持ち味ですね)。「拭く」と「拭う」、ふたつの読みで「拭」を使った技巧。それらが見事に溶け合って、このやさしさと厳しさが絶妙なバランスで同居する愛情あふれる激励が、より印象的なものになっています。

ヅキーさんを訓を、もうひとつ。

もっと汗かいて

涙流していいんだよ

洗って乾かせば元通りだから
     ――――ハンカチ

清々しい一訓ですね。ハンカチも「洗って乾かせば元通り」になるけれど、汗や涙に濡れた顔だって、洗って拭けば元通り。すっきりした顔をパンパンとはたいて、新たな気持ちで歩きだす。そんな情景も、この訓を読んで思い浮かびました。この逆説的な意味も、きっと作者は織り込み済みでしょう。

ドラマチックな、詩のぶさんの訓にも惹かれました。

今日の君は、
えらい取り澄ましているけれど、
本当の君はおてんばで、
泣き虫で、
忘れんぼだ。
僕が保証する。
――――膝に置かれたハンカチ

詩のぶさんの作品は、「自由部門」の一筆選の訓もそうなのですが、視線が沁みるほどやさしい。そして表現が繊細で、美しい。

持ち主の若い女性を、やさしく見守るハンカチ氏。彼は、彼女といつも一緒にいるから、その素顔をよく知っている。だから、いつもと違って「えらい取り澄ましている」今日の彼女の気持ちも、よく分かる。そのことが、ひしひしと伝わってきます。最後にキッパリと言い放つ「僕が保証する。」、このひと言が効いていますね。物の名称を、「膝に置かれたハンカチ」としているところも、実に秀逸。普段と異なる状況にいる彼女の精細な気持ちを、見事に表現しています。ドラマチックですね。映画のワンシーンのような情景が、頭の中にふわっと立ち上がります。見守ってくれている誰かがいるから、がんばれる。ジンときます。

ドラマチックといえば、Starさんとaliyさんの訓も負けてはいません(aliyさんの訓は、ロマンチックと言うべきか!?)。やさしさだって、たっぷり。きっとハンカチには、「ドラマチック」や「やさしさ」の遺伝子が息づいているのでしょう。

目のつけどころがおもしろい、松本さんの一訓も印象的でした。

さりげなく僕を落とすんだ。
僕がきみの
恋のキューピッドになろう。
    ――――ハンカチ

一枚のハンカチから、恋が生まれることもある……そう考えると、人生そのものがとてもドラマチックなものに思えてきますね。……なんだか話がドラマチックづくしになってきた(笑) (原文では、物の名称が「ハンカチ落とし」となっていましたが、誠に勝手ながら「ハンカチ」とさせていただきました。物々訓の作法上、「物」の名称を記載していただくことになっているため、ご容赦ください)

今回も多彩な味わいを、じっくり堪能させていただきました。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。またの投稿をお待ちしています。

蛇足ながら、僕も二訓ほど書いてみました。

僕は知っている。
君の心の
奥深くに広がる秘境、
そこに
沸々と湧き出す
温泉があることを。
―――― ハンカチ

作者:お題:

別れちゃいな。
その涙とも。
―――― ハンカチ

作者:お題:

(物々訓主宰/一筆)

※「自由部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。