物々訓倶楽部

第32回 投稿作品【自由部門】

2017年11月10日

第32回募集(2017年8月15日~10月14日)に寄せられた「自由部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

手を繋ぐ
それだけで伝わることも
きっとある
―――― 電信柱

作者:お題:

人生風任せ

たまにはね
―――― 風見鶏

作者:お題:

俺には俺の道がある
そう簡単には流されないぜ
―――― 橋

作者:お題:

尻に敷かれるのが仕事です
―――― 座布団

作者:お題:

あなたの輝きは私の喜び
―――― 砥石

作者:お題:

気合入れてるところ悪いけど
私は絶対あなたより先に
彼の唇を奪うからね
―――― ルージュ

作者:お題:

キミの熟考する時のクセ
ボクをギュッと握りしめる

ん、機は熟した
畳みかけろっ
―――― 扇子

作者:お題:

アスリートのように
前傾姿勢で勝負するキミ達

立ち去る時まで
支え続けるから
―――― 対局室の座布団

作者:お題:

けっこうな勢いで叩かれるけど
大丈夫、大丈夫

教室のビンゴ大会の景品のボク
当たった時のキミの
とびっきりの笑顔知ってるから
―――― チェスクロック

作者:お題:

自由なときに、
何でもやっておきなさい。
動かされてると思ったら
その時はもう
終局が近い時だから。
―――― 王将

作者:お題:

もうダメだと思っても、
最後まで必死にあがいてごらん。
ここさえ乗り切ることが出来れば
きっと大将首を狙えるよ!
―――― 王将

作者:お題:

一筆選評

自由部門の一筆選は、前回に続き、詩のぶさんが制しました。

手を繋ぐ
それだけで伝わることも
きっとある
    ――――電信柱

お見事です。人間には、言葉の及ばない領域というものがある。しかし、その領域に想いを届ける方法も、僕ら人間は持っています。手をつなぐ。この一動作が、千万の言葉を代弁することもある。スキンシップや表情が持つ力を思うと、言葉の限界を感じます。でも、この訓のような快作に触れると、言葉の強さというものも、改めて感じます。

ヅキーさんのこの一訓も印象的でした。

人生風任せ

たまにはね
――――風見鶏

「風見鶏」というのがミソ。のんきで気ままな雰囲気と、周囲の状況を見極めようとする計算高さが同居する、不思議な味わいの作品となっています。人の複雑さを表しているようで、深い。

次に、ユーモア訓をふたつ。ヅキーさんの「座布団」と、詩のぶさんの「ピアス」です。

尻に敷かれるのが仕事です
     ――――座布団

貴女に釘付け
――――ピアス

まずは、ヅキーさんの「座布団」。「尻に敷かれるのが仕事」って……確かに座布団とはそういう物ですが、改めてこう表現されるとなんだか新鮮。言い方ひとつで、印象って変わりますよね。奥さま方が座布団に座っている光景を、もしどこかで見かけたら、思わず座布団に目が行って、甲斐甲斐しく働く旦那さんの姿を想像してしまいそうです。でもまあ、旦那さんが奥さんの尻に敷かれているくらいのほうが夫婦はうまくいく、なんて言われたりもしますので、それはそれで(笑)座布団って、意外に夫婦円満の象徴!?

そして、詩のぶさんの「ピアス」。わずか六文字で膝を打たせる快作です。「貴女」「釘付け」「ピアス」、この言葉の組み合わせ、字面も、鮮烈で強い。もし「貴女」を「あなた」としていたら、今より印象が弱くなっていたでしょう。さりげなく「貴女」と漢字表記することで、一文が引き締まり、より印象が強化されている。巧いですね。

うすた~さんさんと空飛ぶクジラさんの将棋訓も興味深く拝読しました(うすた~さんさんの訓は、将棋訓とは限定できませんが、勝手ながらそう解釈させていただきました……もし間違っていたら、ごめんなさい)。うすた~さんさん作品の、扇子を握る力を軸にした対局の描写(扇子)と、「アスリートのように/前傾姿勢で勝負するキミ達」という絵が浮かぶ描写(対局室の座布団)は、特に印象的でした。

さて、今回はこのあたりで失礼して、筆を置かせていただきます。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。またの投稿をお待ちしています。

蛇足ながら、最後に僕も一訓。

 

俺たち大きさは違うけど、
夢の大きさは同じだぜ。
―――― 球技のボールたち

作者:お題:

(物々訓主宰/一筆)

※今回ヅキーさんからお寄せいただいたうちの二訓が、行スペースも含めて七行となっており、「本文、六行以内」という作法から外れてしまっていたため、恐縮ながら選外とさせていただきました。両作とも、とても素敵な作品だったので残念です。サイトに掲載できないため、ここで紹介させていただきます。

白鍵と黒鍵

勝者と敗者

両者が奏でる旋律は

例えようもなく美しい
   ――――ピアノ

元気なら一段飛ばし

疲れたら踊り場で一息

マイペースに1歩ずつ

それでいい それがいい
     ――――階段

※「課題部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。