物々訓倶楽部

第34回 投稿作品【自由部門】

2018年3月10日

第34回募集(2017年12月15日~2018年2月14日)に寄せられた「自由部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

強引さも、たまには必要
―――― 瓶の蓋

作者:お題:

ぽっちゃりくらいがちょうど良い
―――― 財布

作者:お題:

世界で一番きれいなのは

毎日磨いてくれるあなた
―――― 鏡

作者:お題:

お出かけ前

かかとを一押し

いいことがありますよう
―――― 靴べら

作者:お題:

噛み合えば敵なし
―――― 歯車

作者:お題:

やっぱ、始まってる?
AI達の
『そっちがイイから』
『いや、こっちじゃね?』
会話がさ~
―――― 格納庫の電車

作者:お題:

『ねぇ跳ねないの?』
『す~ぐ跳ねたがるっ』
あらら、お兄ちゃん
お母さん、スネちゃったよ
―――― 将棋の駒・桂馬

作者:お題:

一筆選評

自由部門の一筆選は、詩のぶさんの一訓です(詩のぶさんは、4回連続の獲得)。

強引さも、たまには必要
    ――――瓶の蓋

シンプルな一文に宿る、重みと深み。秀逸なアイデアに支えられた佳作です。最近、飲料は瓶より缶の時代ですので、たまに瓶ビールや瓶ジュースを見るとレトロな印象さえあります。その瓶の蓋のセリフゆえ、まるで激動の時代を生き抜いてきた方の言葉のような重みと深みを感じます。さらに、栓抜きで瓶の蓋を開ける時の、あのガツッとした強引な感触が想起され、リアルに言葉が響きます。行儀や思いやりや協調も大切ですが、ここは絶対に譲れない!という場面では、この訓が言うように強引さも必要なのでしょう。信念を持って、自分を押し通すことが。

詩のぶさんの別の一訓もお見事。

ぽっちゃりくらいがちょうど良い
         ――――財布

例えが絶妙。お金の話を、こんなにユーモラスで、品よく可愛らしく表現できるなんて……ちょっと感動です。このセンスに拍手。

ヅキーさんの一訓も印象的。アレコレ考えて楽しませていただきました。

世界で一番きれいなのは

毎日磨いてくれるあなた
      ――――鏡

『白雪姫』に出てくる名ゼリフを活かした、味わい深い一訓。鏡は愚直でウソをつきません。その鏡が、「情」の入ったようなセリフを語るところに、この訓のひとつの面白味があります。かといって、このセリフが「毎日磨いてくれるあなた」への「情」、例えば、感謝、親しみ、愛情から出た、いわば肩入れ的な言葉なのか、というと、そうとも限りません。毎日、労を惜しまず尽くしてくれる人は、自然と輝いて見えるものなのかもしれません。実は、容姿の話ではなく、真心の話なのかもしれません。あるいは……磨き終わった「あなた」は、必ず磨きたての一番きれいな鏡面に映るので、それで一番きれいに見えるということなのかもしれません(「美しい」とは言っていないところがミソ)。はたまた、ここに登場する「あなた」は、本当に世界一きれいなのかもしれません!

なんだか理屈っぽい話になってしまい恐縮です。こんな風にアレコレ考えて楽しませていただいた次第です。噛めば噛むほど味が出る、スルメのような訓(笑)いろんな解釈が成り立つ場合、このような味わい方も一興です。さて、皆さんはこの鏡の真意を、どうとらえますか?

ヅキーさんの別の一訓「靴べら」も素敵。

お出かけ前

かかとを一押し

いいことがありますよう
    ――――靴べら

なるほど、そうきたか!という感じ。気のきいた表現で、靴べらなりの「いってらっしゃい」を表現した佳作です。こう言われると、靴べらに対する見方、いや接し方さえ変わりそうです。これからは靴べらを使うたびに、そのやさしさを思い出して、いつもよりいい気分で外出できそう!?

そして今回も、うすた~さんさんが将棋訓の新作を送ってくださいました。毎回決まったテーマで作品をつくるというのは素晴らしい試みで、大変うれしく思っております。僕がそれほど将棋に詳しくないために(やったことはある、くらいのレベルです笑)、理解が及ばない部分もありそうで恐縮ですが……これからも素敵な将棋訓をお待ちしています!

(物々訓主宰/一筆)

※「課題部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。