第34回募集(2017年12月15日~2018年2月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!
お題:手袋
デート中は一休み
君、右手は任せたよ
―――― 手袋
『手袋の反対、言ってみて』
ってなクイズ出すキミ
ん~っ
世代、判っちゃうよん
―――― てぶくろ
他のやつじゃだめなんだよ
あいつじゃないとしっくりこない
君もいつか、そういう人に
出会うんじゃないかな?
その時はどうか大切にしてあげて
絶対に手を離さないで、ね
―――― 片方なくなった手袋
どんなに寒い時だって
僕がしっかりと守ってあげる
君の温もりを感じながら
一緒にどこまでも歩いていこう
―――― 手袋
温かさを
あなたの手元に
とどけたい。
―――― 手袋
暖冬は困るんだナ
―――― 手袋
ボクはキミの指先
温めるだけじゃなく
ヤル気もONにするんだ
フンばれっ
―――― 手袋
そうそう
ボクの噂を聞いて
きつねの子も
買いにきたんだよ
―――― 雑貨屋の手袋
一筆選評
今回の課題部門のお題は「手袋」。一筆選は、ヅキーさんの訓と、うすた~さんさんの訓とで悩みました。まったくタイプの異なる二訓で、どちらも甲乙つけがたい佳作だったのですが、最終的にヅキーさんの一訓に決めました。
デート中は一休み
君、右手は任せたよ
――――手袋
手袋も、恋人の手のぬくもりにはかなわない……冬空の下、仲よく手をつないで歩くふたりの姿が目に浮かびます。ロマンチック。でもその甘い雰囲気を前面には出さず、クールに表現しているところがニクイですね。逆に、カップルのホットな関係や、人肌のぬくもり、そして何より、この手袋の(実は)温かい心持ちが際立つような気がいたします。
次に、うすた~さんさんの一訓。思わず「ハイ」と手を上げてしまいました(笑)
『手袋の反対、言ってみて』
ってなクイズ出すキミ
ん~っ
世代、判っちゃうよん
――――てぶくろ
やはり手袋というと、温かいイメージや、左右で一対という特性から、ヒューマンな訓やロマンチックな訓が、比較的、主流なのかなと思うのですが、この訓は、そんな主流の逆をいくユーモア訓。クダけた調子もよいですね、この訓に合っていて。特に、最後の「よん」が効いてます。
『手袋の反対、言ってみて』……昔、言いました。いや今でも、いやいや先日も身内に言って苦笑されたばかりです(笑)この類の古典的ジョークって、つい言いたくなっちゃうんですよねぇ。他にも、「(今、何時?)おやじ でんぷん がびょう」とか、「この帽子ドイツんだ? オランダ」とか。身内以外には言わないのですが、たまに口をついて出そうになる時もあって、危険キケン(笑)僕は世代が判るのは構いませんが、場合によっては失笑を買う恐れも(笑)でも……なんか、好きなんですよねぇ。
詩のぶさんとstarさんの一訓も、独特の輝きを宿す、味わい深い佳作。
まずは、唯一無二のパートナーをモチーフにした、詩のぶさんの訓。
他のやつじゃだめなんだよ
あいつじゃないとしっくりこない
君もいつか、そういう人に
出会うんじゃないかな?
その時はどうか大切にしてあげて
絶対に手を離さないで、ね
――――片方なくなった手袋
「片方なくなった手袋」のセリフというところがミソ(話者の設定が秀逸!)。落ち着いた口調だけれど、そのひと言ひと言に、なくされたことへの哀愁と怒りが凝縮されているような……そんな心の叫びのようにも感じられて、ズシリと胸に響きます。逆に、落ち着いた口調だからこそ、余計、凄みを感じます。ポジティブな教訓ですが、実は、複雑な感情が根を張った、濃厚な訓。そんな気がいたします。巧い。
次に、ぬくもりに満ちた、starさんの一訓。
どんなに寒い時だって
僕がしっかりと守ってあげる
君の温もりを感じながら
一緒にどこまでも歩いていこう
――――手袋
冬の訓ゆえ、いっそうぬくもりが際立ちます。この訓のポイントは、「君の温もりを感じながら」。この一行が有ると無いとでは、雲泥の差。訓の濃度が大きく変わります。この手袋は、「君」を支える一方で、「君」に支えられている。お互いに手を取り合って、一緒にどこまでも歩いていきたい……そんな手袋の想いがひしひしと伝わってきます。この訓を読むと、手袋をはめること=手袋と手をつなぐこと、のように思えてきます。手袋は、まさに手のカタチをしていますので。温かい作風が持ち味のstarさん。今回の訓もとても素敵で、ホッコリしました。
さて、今回はこのあたりで失礼して、筆を置かせていただきます。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。またの投稿をお待ちしています。
(物々訓主宰/一筆)
※「自由部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。