物々訓倶楽部

第35回 投稿作品【自由部門】

2018年5月10日

第35回募集(2018年2月15日~4月14日)に寄せられた「自由部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

身を粉にしてでも伝えたいことが
この世界には沢山ある
君達にはまず
それに気がついて欲しいんだ
―――― チョーク

作者:お題: 、

ほら、さっさといきな
―――― ざる

作者:お題:

敵陣に行かなきゃ
成れないよ
キミの指先に
ボクらのサイン
伝わってる?
―――― 将棋の駒

作者:お題:

あなたはいつも冷たい私を温めて
くれる。
―――― 体温計

作者:お題:

例えるなら
深海、宇宙?
マグマ、氷河?
未知との遭遇体験記?
―――― 棋譜

作者:お題:

キミらの今までの努力
かわりはないから~

兄弟の言い合いの元は
誰が名人 竜王の筆か
―――― 将棋・段位の免状

作者:お題:

一筆選評

自由部門の一筆選は、3月付けでめでたく「訓人」となった、詩のぶさんの一訓です。(訓人は、物々訓プロジェクトが公認した作家に与えられる称号。こちらの特集記事を、ぜひご覧ください!)

同じく訓人のヅキーさん作「ざる」も、異色の快作で魅力的だったのですが、今回は王道感のある、詩のぶさん作「チョーク」を選びました。

身を粉にしてでも伝えたいことが
この世界には沢山ある
君達にはまず
それに気がついて欲しいんだ
       ――――チョーク

さすが訓人、貫録の一訓です。「チョーク」の特徴をうまく生かした、芯のある深イイ訓。物々訓の王道を行く快作です。

そして、ヅキーさんの「ざる」。

ほら、さっさといきな
    ――――ざる

「ざる」の粋な計らい? よくない手引き? ちょっとしたことには目をつぶって、抜け穴をくぐらせる。よく取れば、寛容で情がある。悪く取れば、大雑把でいい加減。あるいは、それらが混沌と入り混じっている? 単純には割り切りない、妙に人間臭い「ざる」。

普通に読むと、前者の「寛容で情のある気質」のほうが印象として強いのですが、でもやはり、セリフの主は「ざる」。漏れが多いものの代名詞ですから、どうしても、後者の「大雑把でいい加減な気質」の印象も付いて回ります。さらに、「ほら、さっさ」の響きから、なんとなく「どじょうすくい」のような、「ざる」を使った滑稽な踊りまで連想されて、その楽天的な雰囲気から大雑把な気質が、より引き立ってきたりもする。そう考えると、この訓は複雑で深い。ほんのひと言にして、なかなかにスゴイ、異色のユーモア訓です。

ヅキーさんの訓を、もうひとつ。「コンパス」、こちらは「ざる」とは打って変わって、物々訓の王道を行く佳作です。

軸足がブレなければ

丸く収まるものさ
 ――――コンパス

コンパスの特徴をうまくアイデアで包み、教訓へと昇華。小気味いいですね。

続いて、今や将棋訓の代名詞となりつつある、うすた~さんさんの佳作「将棋の駒」。

敵陣に行かなきゃ
成れないよ
キミの指先に
ボクらのサイン
伝わってる?
――――将棋の駒

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の将棋版、いや将棋訓としては、それ以上のエールだと思います。棋士は独りじゃない。駒という仲間、戦友がいる。その様子がひしひしと伝わってきます。そして、生々しい臨場感。棋士と駒の緊迫した息づかいが聞こえてきそう。お見事です。

そして最後に、ゆきさんの「体温計」。逆転の発想を生かした一訓です。

あなたはいつも冷たい私を温めて
くれる。
        ――――体温計

「体温計」が語ると、検温がこんなにも、やさしくロマンチックになるのですね。人にとってはツラい発熱も、「体温計」にとってはよろこびになる。まるでシーソーのよう。でも考えてみると、こういうことって、意外と世の中にはありそう。立場が変われば、状況も変わる。ものの見方や、思いや、気分だって変わる。この訓、一見やさしくロマンチックな風情ですが、実は深い。

(物々訓主宰/一筆)

※今回、baddesigncompanyさんから「生タマゴ」という訓をお寄せいただいたのですが、物々訓で扱うのは人工物に限るという作法があるため、大変申し訳ないのですが、選外とさせていただきました。面白い訓だったので誠に残念なのですが、サイトに掲載できないため、ここで紹介させていただきます。

今度生まれ変わったら、
せめて、鶏に生まれたい。
   ――――生タマゴ

※「課題部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。