物々訓倶楽部

第39回 投稿作品【課題部門】

2019年2月1日

【作品公開が遅れてしまい、すみませんでした!】 第39回募集(2018年10月15日~12月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!

お題:マフラー

なぜだろう
お母さんに巻かれると
ポカポカ

好きな人に巻かれると
ドキドキ
―――― マフラー

作者:お題:

昔はね、
赤い手ぬぐいが
ステキだったのよ。
―――― マフラー

作者:お題:

やあ!
一年ぶりだね。
君の声や息遣い、ひさしぶり。
ずっとずっと一緒にいたい。
でもそれは叶わない。
だから冬の間は君を離さない。
―――― マフラー

作者:お題:

僕の場合、冬眠は禁物ですね。
―――― マフラー

作者:お題:

私があったかい!
それ、あなたです。
―――― マフラー

作者:お題:

『CMの聖子ちゃんみたく
サックスブルーのマフラー
巻いてた~』
お久しぶりっ
次のオーナーは
息子クンね♪
―――― サックスブルーのマフラー

作者:お題:

一筆選評

今回の課題部門のお題は「マフラー」。そして、今回の一筆選もまた訓人・ヅキーさんの一訓となりました。今作も、実に巧い。

なぜだろう
お母さんに巻かれると
ポカポカ

好きな人に巻かれると
ドキドキ
――――マフラー

同じマフラーでも、巻いてくれる人によって、感じ方が変わる。そんな、ちょっとハッとさせられる新鮮な視点で、初々しい心情を綴った快作です。マフラーが「なぜだろう」と問いかける設定も、いい隠し味になっています。

文の構築も素晴らしく、それがこの訓の強い印象を支えています。「なぜだろう」からはじまる倒置法の構造。その大きな傘の中に置かれた、「お母さんに巻かれるとポカポカ/好きな人に巻かれるとドキドキ」の対句法。共通の「に巻かれると」を軸に、「お母さん/好きな人」「ポカポカ/ドキドキ」と文字数までしっかり合わせた美しい設計になっています。

冒頭から、ちょっと小難しい話になりましたが、こうしたレトリックや文章構造といったことを意識しながら訓をつくってみるのも一興。レトリックを活用しつつ、整った文章構造をつくることができれば、多少なりとも訓の印象を強めることは可能です。もちろん、印象を強める手法やレトリックは、他にもたくさんあります。いろいろ研究してみてください。

うすた~さんさんの一訓も、ヅキーさんの訓と同様に「AかBかで感じ方が変わる」という骨組みになっています。でも、設定や味わいは別もので、こちらはこちらで美味。カジュアルにして深みあるおいしさです。

フワッフワか
ズンっとくるか
けっこう
渡す時の雰囲気で
変わるかもね
――――プレゼントのマフラー

マフラーが、友人のように気さくにプレゼント指南をしてくれる。第一印象が大切よ、その印象は演出できるのよ的な。その「プレゼントされる物」が、セリフの主である当のマフラーなのだからオモシロイ。このマフラーは、「フワッフワ」系か「ズンっとくる」系、どちらのタイプなのでしょう。気になります(笑)この訓では、ヅキーさんの訓と異なり、「どう感じ方が変わるのか」を読者の判断にゆだねています。それが、いい余韻となり、この訓をより深みあるものにしているように感じます。

ともするとウェットな印象になりやすい昔話なのに、爽やかで、軽やかで、かわいらしい印象が残る。そんな、yukkomomさんの一訓も好きです。マフラーのセリフではありますが、その向こうに、素敵に年を重ねた女性の姿が見えます。

昔はね、
赤い手ぬぐいが
ステキだったのよ。
――――マフラー

この訓もステキですよ。「赤い手ぬぐい」と言えば、かぐや姫の『神田川』。あの、あまりにも有名な冒頭の歌詞「貴方は もう忘れたかしら」の直後に出てきますよね。「赤い手拭 マフラーにして」。1970年代に青春を謳歌していた方が、素敵に年を重ね、大切に思う若い人にポロッと語った肉声。そんな体温を感じるセリフ。歴史と思い出とトキメキが詰まった、短いけれど濃厚なセリフ。それでいて印象は重くない。むしろ爽やかで、軽やかで、かわいらしい。なんだか『神田川』が聴きたくなってきました。

starさんの一訓は、まるでラブソングの歌詞のよう。

やあ!
一年ぶりだね。
君の声や息遣い、ひさしぶり。
ずっとずっと一緒にいたい。
でもそれは叶わない。
だから冬の間は君を離さない。
――――マフラー

ラブソングのようと書きましたが、「やあ!」という元気のよい掛け声からはじまっているし、後半3行の文末も「たい」「ない」「ない」と韻を踏んでいるので、バラードではなく、テンポのよいラップがよさそうですね。ラップのラブソング。いや、それはともかく……(笑)久しぶりに愛する人(持ち主)に再会できたマフラーの喜びが、両者の間の空気感やぬくもりと一緒に、ひしひしと伝わってきます。季節物は、限られた期間しか一緒にいられないので、その間はしっかり愛でないとですね。そして、オフシーズンの保管も丁寧に。

(物々訓主宰/一筆)

※「自由部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。