第40回募集(2018年12月15日~2019年2月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。ご投稿いただいた皆さん、ありがとうございました!
当コーナーでのご紹介は、課題部門、自由部門それぞれ20訓までとさせていただいてます。ご紹介できなかった訓の作者各位、ごめんなさい! ただ、ここでご紹介できなかった訓も、物々訓サイトでは公開していますので、ぜひご覧ください。サイト内の検索窓に、作者名や物の名前を入力して検索すると見つけやすいです。なお、作法から外れている訓がいくつかあり、それらは残念ながら公開できませんでした。ご了承ください。
お題:加湿器
汗ばむわ~。冬は湿気が多いのよ
ね。
―――― 加湿器
『お母さんの美顔器と
ど~違うの』
小さなカレの問いに
お父さん
『・・ほぼ親戚』
絞りだしたね~
―――― 加湿器
念のため脇役しつつ主役級
―――― 加湿器
潤す為に、私が乾く
乾いた私をあなたが潤す。
もちつもたれつ
この世はめぐる。
―――― 加湿器
あなたがくれる
お水でわたしは生きている
わたしもあなたを潤す
力になりたい
―――― 加湿器
除湿機なんて大嫌い
そんな自惚れの冬が終わり
やがて梅雨どき
ごめんね除湿機
活躍応援するからね
―――― 加湿器
俺は冬に重宝される。
求められるところがあれば
そこで頑張るんだ。
求められるうちが、華だ。
―――― 加湿器
喉を潤して笑い声を。
肌を潤して笑顔を。
広げているのはスチームだけじゃ
無いんだよ。
―――― 加湿器
妻の二倍、三倍
確実に働けども
あることさえ
忘れられてしまう
儚き存在
加湿器
―――― 加湿器
乾ききったあなたの心と体。
思いっきり深呼吸してごらん。
ゆっくり、吸って、吐いて。
ほら、あなたは潤いに包まれた。
私がいる限り、あなたは大丈夫!
―――― 加湿器
エアコンつけすぎよ。
湿度が上がれば
温度も上がるの。
わたしがいれば
財布も潤うわ。
―――― 加湿器
いざ出陣だ!
一気に広がれ!
―――― 加湿器
一日一日、歳老いてゆく。
加湿器でアンチエイジング。
寝て若返るなんて
そんなはずないのに。
―――― 加湿器
加湿が出来るのは当たり前。
空気をきれいに出来ること、
ボディのコンパクトさも必要だ。
今の時代を生き抜くには
マルチなスキルが求められる。
大変だけど、頑張るぜ。
―――― 加湿器
フィルターお手入れランプが
点灯している。
お母さんが気づいて、掃除機で
埃を取ってくれた。
自分のことを見てくれている人
って、いるんだな。
―――― 加湿器
『やさしさ、不足してる』
うつむくキミ
カゼ気味だね
今夜、ゆっくり
温か~くして、お休み
―――― 加湿器
加湿、加湿と言うけれど
古い家は加湿より結露
朝は窓がびしょ濡れ
―――― 加湿器
み、水を・・、早く!
ふう~間に合った。
このスリルがたまらないんだよな
あ
―――― 加湿器
今年は赤ちゃんもいるのね
潤し甲斐があるわ
お水はこまめに入れてよね
私がこの家を守るんだから
―――― 加湿器
あなたには
健康でいてもらいたい
綺麗でいてもらいたい
わたしがあなたを包むから
少しは助けに
なれるかな
―――― 加湿器
一筆選評
今回は、課題部門への投稿が急増しました。お、これはもしや!?と思い、調べてみたら……やはり『公募ガイドONLINE』のおかげでした! 以前も一度、募集情報を取り上げてくださり、その時も投稿がグンと増えたんですよね。いま募集している課題部門(お題:バッグ)も取り上げていただいたようで、続々と作品が寄せられています。『公募ガイドONLINE』に感謝。ありがとうございます。
そして、作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。特に賞品があるわけでもない物々訓の募集に、たくさんの方が興味を持ってくださったこと、心からうれしく思います。
ここでの紹介は課題部門、自由部門それぞれ20訓までという決まりがあるため、お寄せいただいたすべての訓(物々訓では、作品を「訓」とも呼びます)は紹介できませんでした。紹介できなかった訓の作者の皆さん、ごめんなさい!
それでは選評に移りましょう。僕の判断や解釈で書いているため、もし作者さんの意図と違っていたら、ご容赦を。
今回の課題部門のお題は「加湿器」。一筆選は、村田直美さんのユーモア訓です。この訓は、なんというか……逆説的に教訓になっているというか……かなり異色なのですが、それゆえ印象が強く、思わず惹きつけられました。このおとぼけぶり、サイコー。
汗ばむわ~。冬は湿気が多いのよ
ね。
――――加湿器
確かに湿気は多いのよね、アナタがいますから(笑)人間界でも、実際にこんなことあるような気がして……。そう、例えば……ひとりでペラペラしゃべりまくってた人が、帰り際に「みんな、おとなしいねぇ」なぁんて言ったり。灯台下暗しというか、なんというか。自分のことって、意外と分からないものだから、ちょっと怖い。気をつけよーっと。
一方、うすた~さんさんのユーモア訓も、目のつけどころが個性的。
『お母さんの美顔器と
ど~違うの』
小さなカレの問いに
お父さん
『・・ほぼ親戚』
絞りだしたね~
――――加湿器
ほのぼの、クスッ。でも背後には、ひとつの技術を応用して積極的に市場を増やす、タフな企業の姿が透けて見えたりして。そのギャップもおもしろいなぁと。
よつばさんの訓も印象的。
念のため脇役しつつ主役級
――――加湿器
「念のため」っていうのが、いいですね。かわいらしくもあり、したたかでもある。自ら「主役級」と言い放つところをみると、控えめを装ってはいるものの、内心、自信満々? 能ある鷹は爪を隠す。
次に、もちつもたれつの関係をテーマにした、この二訓。
(与侑さん作)
潤す為に、私が乾く
乾いた私をあなたが潤す。
もちつもたれつ
この世はめぐる。
――――加湿器
(岡部綾香さん作)
あなたがくれる
お水でわたしは生きている
わたしもあなたを潤す
力になりたい
――――加湿器
客観的な表現を生かした与侑さんの訓は、格言の趣。感謝と誠意が息づく岡部綾香さんの訓は、やさしい趣。テーマは同じなのに、印象はたいぶ違います。こうしてならべて拝読すると、実に味わい深い。
世の中、もちつもたれつ。考えてみれば、それは道具との関係でも同じ。手をかけて大切に使えば、長くしっかり働いてくれる。しっかり働いて役立ってくれれば、手をかけて、大切に長く使おうと思う。ぜひ、道具ともよい関係を築きたいものです。
最後に、春爺さんの一訓を。
除湿機なんて大嫌い
そんな自惚れの冬が終わり
やがて梅雨どき
ごめんね除湿機
活躍応援するからね
――――加湿器
調子にのって、つい自惚れちゃって、後悔する。こういうことって、ありますよね。僕も経験あります。そういう時は、とっても恥ずかしい気持ちになって、あぁこれからは謙虚を心掛けよう、と強く思うわけです。そしてなぜか、年を重ねるごとに、そういう思いは強くなっていくような気がします、僕は。こういうのも、人間が丸くなるってことなのでしょうかね。
この他にも素敵な訓がいろいろありましたが、今回はこのあたりで失礼して、筆を置かせていただきます。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。じっくり堪能させていただきました。またの投稿をお待ちしています。
あ、そうそう。蛇足ながら、最後に僕も一訓。
こんなに湿っぽいのは、
君のせい。
さぁ涙をふこう。
やがて君にも春がくる。
―――― 加湿器
(物々訓主宰/一筆)
※「自由部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。