物々訓倶楽部

第41回 投稿作品【課題部門】

2019年5月20日

第41回募集(2019年2月15日~4月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。たくさんの作品投稿、ありがとうございました! 特に賞品があるわけでもない物々訓の募集に、たくさんの方が興味を持ってくださったこと、心からうれしく思います。

当コーナーでの作品紹介は、課題部門、自由部門それぞれ20訓まで(物々訓では、作品を「訓」とも呼びます)とさせていただいています。紹介できなかった訓の作者さん、ごめんなさい! ただ、ここで紹介できなかった訓も、物々訓サイトでは公開していますので、ぜひご覧ください。サイト内の検索窓に、作者名や物の名前を入力して検索すると見つけやすいです。なお、1行の文字数や行数オーバーなど、作法から外れている訓がいくつかあり、それらは残念ながら公開できませんでした。ご了承ください。

当ページの下部に、主宰・一筆による選評がありますので、そちらもぜひご覧ください! なお選評は、一筆の解釈・判断で書かれているため、もし作者さんの意図と違っていたら、ご容赦ください。

お題:バッグ

僕を手放すほどの

景色が人が

この旅の先に待っている
―――― バッグ

作者:お題:

わたしのこと、太らせないでよね。
―――― バッグ

作者:お題:

荷物はわたしの中に

想い出は胸のうちに
―――― バッグ

作者:お題:

捨てるタイミングを
伺っていたはずが、
気づいたら数が増えている。
何でやねん?
を毎年繰り返す
―――― バッグ

作者:お題:

僕ら小さなカーゴプレーン
パイロットは君
物・夢・希望 全部詰め込んで
駆け巡ってゆく 街・国・世界
―――― バッグ

作者:お題:

いつもの右側
慣れた景色にニッコニコ
たまに慌てて左側
慣れない景色にドッキドキ
何よりも
この揺れが大好きなんだ
―――― ショルダーバッグ

作者:お題:

口半開き野郎
底抜けに明るいバカ
この業界じゃやってけねえ
―――― バッグ

作者:お題:

あー、今日もおなかいっぱい!
でも、まだ入るかな!!
―――― バッグ

作者:お題:

おい、何を悩んどるんな
早う俺をレジまで持ってけよ
色といい形といい最高じゃろ
男ならスパッと決めえや
ああ奥さん
いらんこと言わんといて!
―――― 売場のビジネスバッグ

作者:お題:

初めての通知表、
思い出の作文用紙、
ぐちゃぐちゃに丸めた体操着、
友達と書きあった交換日記、
お別れの卒業文集、
ずっと見てたよ、ありがとう!
―――― ランドセル

作者:お題:

温もりを感じなくなってもう二年
「捨てないし誰にもあげない」
ってお母さんに言ってくれたね
これからも机に向かうキミを
横から見守らさせてください
―――― ランドセル

作者:お題:

使い古したものほど価値がある。
そんな代名詞に私はなりたい
―――― バッグ

作者:お題:

『往診の時は、これね』
おじいちゃんのものを
大切に使っているキミ
ボクを直せる職人さんも
見つけといてね
―――― 往診用の革のバッグ

作者:お題:

おいおいおい
まだまだ食えると思ってんの?
おもしろい
底力見せてやらあ
―――― バッグ

作者:お題:

一筆選評

今回も課題部門に多くの作品をお寄せいただき、ありがとうございました! お題は「バッグ」。素敵な訓がたくさんありました。一筆選は、mikomikonさんの「ビジネスバッグ」と、無名のサプールさんの「リュック」とで迷いましたが、結果的に、mikomikonさんの一訓に決めました。

詰め込みすぎ
僕も君も
パンクしちゃう
――――ビジネスバッグ

巧いですね。

ビジネスバッグのふくらみ具合は、仕事量や忙しさのバロメーターとも言えます。言い換えれば、心の余裕を映す鏡でもあるってこと。パンクしてしまったら元も子もないから、鏡で自分の顔を眺めるように、たまには客観的に自分のビジネスバッグの様子を眺めてみるのもよいかもしれませんね。一方、家族や親しい人も、その人のビジネスバッグを見て、日頃から様子を気にかけてあげるとよいかも。もっとも、パンパンのビジネスバッグは、仕事が充実している証とも言えるのですが。……この訓を読んで、そんなことをつらつらと考えました。

そして、無名のサプールさんのこの一訓。

電車内で前に背負ってくれるから
あなたの鼓動を感じられる。
       ――――リュック

ほのぼの、あったかい質感ですが、その実、芯のあるメッセージ訓でもあります。昨年末のニュースに出ていたのですが、電車の迷惑No.1は背負いリュックなんだとか。こうした背景を意識せず純粋に読んでも素敵なのですが、意識して読むと、より素晴らしい。なんとなく、リュック前抱えを間接的に促す、物々訓流の「コピー」のようでもあります。

一筆選のmikomikonさんの作品を、もうひとつ。この一訓も印象的でした。

ずいぶん伸びたね。
僕の持ち手も、君も背も。
――――レッスンバッグ

わずか2行のセリフに、長い時間が凝縮されています。さっぱりした語り口だけど、ちょっぴりドラマチック。「レッスンバッグ」という設定も、いいですよね。持ち主の子の成長が、より鮮やかに伝わってきます。想像もふくらみます。なんのレッスンなんだろう。音楽?スポーツ?英語? これまでがんばってきた中で、いろんなことがあったんだろうなぁ。泣いたり、笑ったり、感動したり……。子どもの真剣なまなざしや、はじける笑顔が目に浮かびます。……蛇足ながら、倒置法の語り口、効いてます。

次に、胸がときめくような、ヅキーさんの一訓。

僕を手放すほどの

景色が人が

この旅の先に待っている
    ――――バッグ

旅に出たくなりますね。まだ見ぬ未知の世界が、この世にはたくさんある。なんだかワクワクしてきます。

お次は、「肥満」を切り口にした、ふたつのユーモア訓。

(無名のサプールさん作)
最近お腹が出てきたんじゃない?
もうこれ以上、
ベルトは緩められないわよ。
    ――――ウエストポーチ

(新免 弘樹さん作)
わたしのこと、太らせないでよね。
        ――――バッグ

同じ「肥満」でも、無名のサプールさんの訓は「人の肥満」、新免 弘樹さんの訓は「バッグの肥満」。どちらも、おもしろくて味わい深い。好きだなぁ、こういうユーモア訓。

ユーモア訓の流れで、もうひとつ。あるある系の佳作です。

(金森尚規さん作)
捨てるタイミングを
伺っていたはずが、
気づいたら数が増えている。
何でやねん?
を毎年繰り返す
     ――――バッグ

思わずクスッとしてしまいますね、これは。ホント、こういうことあるんですよねぇ、僕も。日常のちょっとしたことも、こんな風に書くとトホホ感が滲み出して、とたんにおもしろくなる。そこがまた、おもしろいですね。コトバの妙味。

最後に、ファンタジーな趣が個性的な、来野 怜志央さんの一訓を紹介して、筆を置きたいと思います。

僕ら小さなカーゴプレーン
パイロットは君
物・夢・希望 全部詰め込んで
駆け巡ってゆく 街・国・世界
       ――――バッグ

夢のある一訓ですね。「小さなカーゴプレーン」「パイロットは君」とは素敵な例え。「物・夢・希望」「街・国・世界」と、さりげなく表現のカタチをあわせているところも、気がきいています。

この他にも、まだまだ素敵な訓があるのですが……今回はこのあたりで失礼します。作品をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました。またの投稿をお待ちしています!

おっと、蛇足ながら、最後に僕も一訓。

バッグ BAG
カバン かばん 鞄
書き方ひとつで、
ちょいイメチェン。
―――― バッグ

作者:お題:

(物々訓主宰/一筆)

※「自由部門」もありますので、ぜひそちらもご覧ください。