第2回募集(2012年6月15日~8月14日)に寄せられた「課題部門」の作品をご紹介します。
お題:団扇(うちわ)
新しい風は、
がんばってる人から生まれる。
―――― 団扇
風を起こそう。
ともに手をとって。
―――― 団扇
クールになりたきゃ
よそ行きな。
バタバタするのが
仕事だぜ!
―――― 団扇
イメージしてごらん。
僕の役割は涼しさだけ?
イメージしてごらん。
イメージの中のぼくを。
―――― 団扇
薄っぺらいやつだなんて、
そんなことは言わせないよ。
中身はけっこう、
芯が通ってるんだから。
―――― 団扇
結局ね、センスはないけど
骨のあるあいつらがね、
ここの空気を
良くしてくれてるの。わかる?
あ、うちわネタで
ごめんなさないね。
―――― 団扇
送る風は
愛情満点。
たとえ相手が
炭火でも。
―――― 団扇
結局、最後は人間力
待ってるだけじゃだめだよ。
風は自分でおこさなきゃ!
―――― 団扇
いつもは涼しくすることが仕事。
アイドルのコンサートでは、
熱くすることが仕事。
―――― 団扇
こどもは風の子。
わたしは風の母。
―――― 団扇
団扇と、扇子。
どっちがセンスいいの?なんて
うちわ揉めしてる場合じゃない
でしょ。暑いんだから。
―――― 団扇
扇げば尊し。
―――― 団扇
節電やエコの鏡だって?
いやいやいやいや、
私なんて・・・
あっ
また涼しくなっちゃいました?
―――― 団扇
俺に頼らず、
風を起こしてみろよ。
―――― 団扇
扇ぐと聞こえるのは何?
蝉の声?
僕には夏の思い出が聞こえる。
―――― 団扇
少し扇ぐと心地よくて、
たくさん扇ぐと暑くなる。
何だか身に覚えがあるなあ。
―――― 団扇
団扇あおいで、風が吹く。
風が吹けば桶屋が儲かる。
誰も儲からないけれど、
みんなであおげば、世が変わる。
―――― 団扇
なあ、
下敷きよりいいだろ?
―――― 団扇
パタパタと煙をあおぎ
道ゆく人の
食欲をかきたてます。
―――― 団扇
夏が一番!
一年中 働きたいが
年間十カ月の骨休み人生。
今が旬の私のファンも
最近ふえてきた。
彼岸までがんばろうニッポン!
―――― 団扇
一筆選評
今回の「課題部門」は、「自由部門」共々素敵な訓がいっぱいで、一筆選にどの一訓を選ぶか非常に悩みました。中でも、一閃さん作「新しい風は、/がんばってる人から生まれる。」と、後援会池の会さん作「イメージしてごらん。/僕の役割は涼しさだけ?/イメージしてごらん。/イメージの中のぼくを。」は特に一筆の心に響き、最後までどちらの訓を選ぶか悩みました。
一閃さんの訓は、シンプルにして味わい深く、力強い一訓。後援会池の会さんの訓は、独特の語り口で、心を風情で満たす一訓。
結果的に、一筆選には一閃さんの訓を選ばせていただきました。
「団扇」が語る言葉として味わうと、そのシンプルな言葉の背景にいろんなものが見えてきます。パタパタと「団扇」をあおぐ手が見えます。そこから生み出される風は、機械から自動的に送り出される無機質な風とは違います。その風には、人の「情」が宿っています。人が何らかの意思を持って手を動かすからこそ生まれる、人間的な風です。がんばってあおぎ続ければ、風は生まれ続けます。あおぐのを止めれば、風も止まってしまいます。そうやって生み出された風は、それぞれ、その風ならではの価値を持つ。そう思えてきます。
シンプルにして味わい深く、力強い。一閃さんの訓は、まさに「団扇」の風そのもののような気がいたします。
この他にも、個性的な秀作がいっぱいです。気骨あふれる、小僧さんの一訓。「団扇」にまつわることを洒落を交えつつ網羅した、PCC会員004さんの力作。イナセでかっこいい、糸旦さんの一訓、思わずクスッと笑ってしまう、KeyManさんの楽しい一訓。「団扇」のささやかな風をスケールの大きな話に巧みにつなげた、aririnさんの一訓。ユーモアあふれる、ふぁいたさん作「送る風は/愛情満点。/たとえ相手が/炭火でも。」。気概を呼び覚ますnamiさん作「俺に頼らず、/風を起こしてみろよ。」などなど。いやあ、どの訓も味わい深いなぁ、と感じ入った次第でございます。
皆さんも、皆さんなりの感性で、ぜひ各作品を味わってみてくださいませ。(一筆)