訓友来訪【第12回】

今井彰さん小説家

2013年12月30日

NHKに入局して数十年、テレビ屋、とりわけドキュメンタリー専門に、番組づくりに心血を注いだ。
今は、小説家として生きようとしている。

ドキュメンタリー番組を作るのは、岩壁登りに似ている。
手が岩肌と触れ合うと、次第に掴むべき場所がわかってくる。掴む場所を誤らなければ登っていける。転落は防げる。
一方、小説は暗い海を小舟で漕ぐようなものだ。
行先もわからない。灯台の光も見えない。遭難の危機もある。困ったものだ。
かけたキャリアが違うのでいたしかたない。

戦場ディレクターとか、社会派と呼ばれた時代もあった。
「プロジェクトX」のプロデューサーとしては、全作の現場を指揮した。企画構成を行い、編集で怒鳴り、コメントを書き、収録やダビングを行った。
デビュー作の小説『ガラスの巨塔』に色濃く反映されている。

「プロジェクトX」は結局、私の人生に眩い光と複雑な翳を落とした。
放送終了から8年が経つが、その光と翳は明滅しながら私の中で彷徨い続けている。
今も時折、身体の深奥が微かに疼くのはそのためだ。

火曜日の夜。
バーから男たちが消えた。
ママたちは嘆いた。
都市伝説は、
「だった」と「風の中の昴」から
始まった。
―――― テレビ(プロジェクトX)

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