生けたら活きる
煎って逝くけど
異形は粋る
第29回/一筆選評 未公開 …に属する訓
桐箱の中で泣いてる花瓶
―――― 花瓶
たった一人に
愛されている君と僕
―――― 花瓶
歌を詠むために
花の香を微かに
漂わせてごらん
―――― 花瓶
今日は何色に染めてくれますか?
どんな香りで包んでくれますか?
―――― 花瓶
う、刺さる!
アナタの鋭い切り口が
私のなかに入ってくるの
あなたが咲かせるキレイな花を
わたしは静かに
海のように包みます。
―――― 花瓶
時々じゃなくって
床の間に置いてほしいの
お客様がいらっしゃる時だけじゃ
なくて
―――― 九谷焼きの花瓶
わたしがいつも濡れているのは
綺麗な花のせいではないの
次から次へと滴り落ちて
恥ずかしいほど染みていく
それはご主人様がわたしにつけた
2センチ程のひび割れのせい
―――― 花瓶
床に倒れて、
花の命を散らす。
黒い染みの上でわたしは、
まだ涙を流しています。
―――― 花瓶
めだたないけど
役に立っては
いるんだぜ
―――― 花瓶
可愛い子が来た
綺麗な子が来た
どうかおねがい、
わたしの腕の中で
この子をできるだけ永く抱かせて
―――― 花瓶
たまにはなぁ、
本物の花を挿せっうの!
なんでいっつも、
造花やねん。
しかも、
ホコリかぶってるし……
―――― 花瓶
壊れ物を扱うように、
君は私に触れる。
その柔らかさを知った日から、
私を埋められるのは、
君という花だけ。
―――― 花瓶
一輪と一本で生きていこう。
―――― 一輪挿し
私のことも見てください……。
―――― 花瓶
重い……転職したい
俺の職場は、部屋の白い壁のとこ
透明な腹に水と石ころと花とを
満杯につめられて、ぶら下がる
……花に元気がない?水を足す?
おれ、限界……あああああ!
―――― 壁掛け花瓶(元水槽)
おじょうさま
このセバスチャンが
世界一美しい
レディーに育みましょう
―――― 花瓶
みんな見るのは花ばかり
けれどもぼくが倒れたら
すべてはみんなぶちこわし
縁の下のちからもち
それってぼくのことだよね
―――― 花瓶
淀んだ水に
ボウフラが沸き
枯れた葉をまとい
花の遺骸は眠る
忘れ去られた
小さなわたし
―――― 花瓶
料理にあった器があるように
あるいは記念日には
特別な料理を食べるように
花にあった私であり
その日その時の雰囲気にあう
私たちでありたい
―――― 花瓶
花があってこそ花瓶
花がなければただの瓶
でも
私もちゃんと見れば
綺麗なのよ
―――― 花瓶
良かったね!
もらった思い、
全部預かってあげる。
―――― 花瓶
きれいだね
ぼくはマネージャーさ
―――― 花瓶
ぼくの心の中にも
君が咲いているようだね