物々訓入門

#1 「物々訓」って何?

2015年4月20日

今、静かに注目を集めている、新ジャンルの短文文芸「物々訓(ぶつぶつくん)」。この連載では、私、主宰の一筆(加藤雅一)が、そのイロハをご紹介していきます。

物言わぬ「物」のセリフで、自分なりの名言を綴ってみよう。物々訓は、そんな発想から生まれました。今から3年ほど前のことです。

1行15字以内、本文6行以内などの簡単な作法で、誰もが気軽に楽しめる物々訓。実際にどんなものなのか、私の作品から一例を挙げてみましょう。

折れる時もある。
そんな時こそ
プッシュ、プッシュ。
ポジティブにいかなきゃ。
―――― シャープペン

作者:お題: 、

握手をすれば、
きっと新しい世界が開けるよ。
―――― ドアノブ

作者:お題:

私が言うのもなんだけど、
自分を失くしちゃうほど
身を削って働くことないよ。
―――― 石鹸

作者:お題:

このような作品を、私をはじめ旗ふり役を務める物々訓作家がつくり、また広く一般からも作品投稿を募って、本サイトで発表しています。投稿も数多くいただき、これまでにサイト上で発表された作品は500以上。3月には、その中から抜粋した作品を掲載した『物々訓辞典』という本も刊行しました(この本に関するお問い合わせはこちらから)。

ではなぜ、このような短文文芸を皆さんにご提案するのか?

もともと物々訓は、私個人の趣味でした(当初は「物々訓」という名前もありませんでした)。「もし物がしゃべり、名言をつぶやいたとしたら? そのつぶやきを想像して作品化したら、おもしろいのではないか?」ある時そう考えて、独り作品づくりをはじめました。2010年のことです。以来、さまざまな物と向き合いながらコツコツと作品を書き溜めるうちに、気づきました。「これは意外とタメになる」

純粋に楽しめるだけでなく、

  • さまざまな物と向き合い、また自分自身とも向き合いながら名言を模索することで、「大切なこと」を発見できる。
  • 物に宿る、人間の叡智に触れることができる。
  • 物を大切にしようという気持ちが芽生える。
  • 物を見る視点が多様になる。
  • 洞察力や感性、表現力が磨かれる。
  • 心が豊かになる。

この短文文芸のよいところにたくさん気づき、次第に「他の人にも勧めてみよう」と思うようになりました。そうして、改めてコンセプトを練り直し、2012年に物々訓プロジェクトを発足、本格的に活動を開始しました。

現在では、こうした物々訓の魅力や可能性に共感いただき、高校や大学で取り上げていただくなど、教育関係者からもご注目いただいています。

見渡せば、世の中は物で満ちあふれています。素材には事欠きません。あなたもこの物々訓入門を読んで、ぜひ気軽にトライしてみてください。さまざまな物と向き合うことで、これまでと風景が違って見えたり、心持ちが変わったり、素敵な変化が起きるかもしれませんよ。

それでは最後に、私たち物々訓プロジェクトメンバー一同の想いをお伝えして、連載第一回目を締めくくりたいと思います。

物々訓に託した想い

身のまわりにある、いろんな「物」。ふだん何げなく接している「物」でも、それら一つ一つには、もれなく人間の叡知が宿っています。そして、どんなに小さな「物」、どんなに目立たない「物」も、人間によって各々の役目を与えられ、それを全うするために物言わず黙々と仕事に励んでいます。

そう考えていろんな「物」と改めて向き合ってみると、私たちにとって大切なことが見えてきます。人生や仕事に有益な教訓や、人間や物事の真理・本質など。そこには、「物」の値段や機能を超えた価値があります。

いろんな「物」を通して、楽しみながらポジティブに「大切な何か」を発見する。または、自分の信念や経験などを「物」に投影する。それを「物」のセリフで綴り、文芸作品としてお互いに発表・共有し合う。そうすることで、昨日より、ほんのちょっとでも心の支えが増えたり、心豊かになれたら素晴らしい。そんな想いが、私たちの原動力になっています。

「物々訓」主宰/一筆(加藤雅一)