物々訓入門

#2 物々訓の作法

2015年5月20日

今、静かに注目を集めている、新ジャンルの短文文芸「物々訓(ぶつぶつくん)」のイロハを、私、主宰の一筆(加藤雅一)がご紹介していく当連載。第2回は、作品をつくりはじめる前に、まず知っていただきたい「作法」についてお話しします。

作法といっても簡単なものですので、ご心配なく。

第1回でお話しした通り、物々訓は、物言わぬ「物」のセリフで、自分なりの名言を綴ってみよう……そんな短文文芸です。まずは、もう少しだけ詳しく作品のつくり方をご説明しましょう。

作品のつくり方

現在、物々訓公式サイトでは、作品のつくり方を下記のようにご案内しています。

  1. 「物」と向き合うことで「大切な何か」(人生や仕事などの教訓、人間や物事の真理・本質など)を導き出し、それを「物」が語る言葉として短文で表現・作品化する。
  2. または、自分がこれまでに得た教訓や、培ってきた信念、日頃の想いなどを「物」に投影し、その「物」の言葉として短文で表現・作品化する。

これは作品づくりの要となる作法紹介のページに記載しているものゆえ、ちょっとカタめの言い回しになっていますので、もう少し簡単に言い直してみましょう。だいたい、こういうことです。

①「物」の特性からセリフをつくるか②自分の想いを「物」のセリフにするか、2つの方法があって、そのどちらについても、「大切な何か」を感じさせる、自分なりの名言として昇華する。

より具体的な作品づくりの方法は、また回を改めてご説明しますが、おおまかに言うと、「物」発の名言と自分発の名言の2つがあるということですね。

実際に例を出してご説明したほうが分かりやすいと思うので、第1回でご紹介した私の作品「シャープペン」で解説してみましょう。

折れる時もある。
そんな時こそ
プッシュ、プッシュ。
ポジティブにいかなきゃ。
―――― シャープペン

作者:お題: 、

シャープペンと向き合ってみると、いろんな特性があることが分かります。例えば「プッシュして芯を出す」とか「芯が細いので、力を入れると折れやすい」とか……他にもいろいろありますが、そうした特性を抽出して、それを深みあるセリフに仕立てるのが、①「物」の特性からセリフをつくる(「物」発の名言)という方法です。

一方、あらかじめ自分の経験などから「心が折れる時もあるけど、そういう時こそポジティブ発想でがんばらなきゃ」という想いを持っていて、その想いをシャープペンのセリフに置き換えてみると、どうなるだろう?……そんな発想でつくるのが、②自分の想いを「物」のセリフにする(自分発の名言)という方法です。

こうした方法で、自分なりの名言を模索してみてください。

教訓めいたことを誰かにまともに話すのは恥ずかしいし、説教くさくなってしまうのも嫌だから、ちょっと腰が引ける、という方もいらっしゃると思いますが、自分の言葉ではなく、あえて「物」のセリフに置き換えて、物々訓の作品として伝えてみると、どうでしょう? そんなに腰が引けることもなくなるはずですし、逆にユーモアや重みなども生まれて、自分の想いを、よりよいカタチで伝えられると思いますよ。

作品づくりの原則

次に、作品づくりの原則をご説明します。いくつかあるので、まずは図と併せて、そのすべてを列挙してみましょう。

howto

  1. 物:人工物に限る。
  2. 1行の文字数:15文字以内
    ※句読点、感嘆符、疑問符、カッコ、各種記号、アルファベットなども1文字と数える。
    ※16文字目に句読点か閉じカッコがくる場合のみ、1行16文字となっても良い。
  3. 行数:6行以内(作品本文)
    作品本文に添えて、語り手となる「物」の名称を記す。
  4. 改行の有無は自由。
  5. 公序良俗に反さない。人を誹謗中傷しない。
  6. 作者名は、訓号でも本名でもどちらでも良い。
    ※訓号=物々訓の作者として用いる雅号

いろいろ書いてありますが、ポイントは3つです。

まず1つ目。「物」は人工物でなければなりません。人工物であれば、例えば「ネジ」のような1部品から、さまざまな物を組み合わせてつくった大きな物(例えば「飛行機」など)まで、何でもOKです。

一方、水、石、花、雲、動物など、人間がつくった物ではない、自然の物は対象になりません野菜などの農作物も対象外にしています。

意外と判断しづらい物もあるので、一例を挙げておくと……例えば、「トマト」は野菜なのでダメですが、それを加工してつくった「トマトケチャップ」はOKです。「物」というと固体のイメージが強いですが、加工物であれば、固体でなければならないというわけでもありません。ワインやビールなどのお酒は液体ですが、加工物なのでOKとしています。(パッケージも含めてトマトケチャップ、ワイン、ビールというとらえ方もできます)

ということで、原則上は「物」の定義を「人工物」としているため、こうした加工食品や飲料などの液体も許容していますが、基本的には、できるだけ分かりやすい、「物」らしい「物」で作品をつくることをお薦めします。

次に進みましょう。2つ目のポイントは、1行は15文字以内ということです。句読点や感嘆符、疑問符、カッコ、各種記号、アルファベットなども1文字と数えます。ただし、16文字目に句読点か閉じカッコがくる場合のみ、1行16文字となってもOKです。

最後に3つ目のポイントは、本文、つまりセリフの部分が6行以内ということです。改行の有無は自由ですので、改行せずにセリフをびっしり詰め込んだ場合、基本的には15文字×6行で最大90文字ということになります。前述の「16文字目に句読点か閉じカッコがきた場合」は、もう少し増える場合もあります。仮に6行すべての16文字目に句読点か閉じカッコがきた場合、最大96文字となります。あまりこのようなことはないとは思いますが。

この他にも、「公序良俗に反さない。人を誹謗中傷しない。」という当たり前のことや、作者名のつけ方といったこともありますが、説明が必要と思われるポイントは以上です。

作法の話は、これでおしまいです。いよいよ次回からは、実際の作品づくりについてご説明していきます。いわば、実践編。どうぞ、ご期待ください。

「物々訓」主宰/一筆(加藤雅一)